研究課題/領域番号 |
23K01014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
飯島 力 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部附属国際人文社会科学研究センター, 特任助教 (30906772)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 漁民 / 海と魚 / 公害 / 生存 / 漁業 / 水俣 / 環境人類学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、水俣病発生後の海を生き抜く漁民の諸実践に光をあて、汚染された海と新たな関係を築きながら生きる漁民のありようを解明することをめざす。具体的な対象として、水俣の対岸にあり、県内有数の漁師町である御所浦島の漁民に着目する。そして、A)御所浦島における漁業の変遷と水俣病の影響、B)漁民からみた海・魚の変化と水俣病への対応、C)汚染された海を生きる漁民の諸実践、という三つの研究項目を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は、水俣病発生後の海を生き抜く漁民の諸実践に光をあて、汚染された海と新たな関係を築きながら生きる漁民のありようを解明するものである。それにより、歴史的な不正義のみをもって人びとを捉えてしまう「被害を中心に据えた研究」を、水俣病を素材とした人類学的研究が批判的に展開する可能性を示すことを中核的な問いとした。本年度は新型コロナウィルスの影響が落ちついたこともあり、フィールドでの集中的な居住というより訪問という形ではあったが、断続的なフィールドワークを実施することができた。その成果の一部はすでに、国際会議で発表済みである。また、環境汚染後の世界を生きる人びとという本研究のテーマを国際的な視点から検討することを目的に、海外の先駆的な環境人類学の研究を翻訳した。主な成果は以下のとおりである。 第一に、公害発生後も不知火海を生きてきた人びとがいかなる漁業を営んできたのかという点について、現地の人びとへのインタビューや統計調査等を踏まえて検討し、第46回韓国日本近代学会において口頭発表した。第二に、水俣が喚起する問題をより広範な文脈に位置づけながら新たなに再考するために、環境汚染と闘う米国の先住民を主題とした民族誌を翻訳した。翻訳本は『川は私たちの中に―先住民モホークの環境汚染との闘い―』として、花伝社から出版された。第三に、不知火海沿岸地域で代々漁業を営んできたある一家に着目し、ライフストーリーを自由に語っていただくような形でインタビューを積み重ねた。インタビュー対象のなかには、水俣病が大きな社会問題となった後に生まれた20代から40代の漁師もいる。その一部は第一の研究成果のなかに組み込まれている。また、現在進行形で分析ではあるが、不知火海を主要漁場として生きてきた漁師の葛藤や喜びなど、その生き様に迫れている点は大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の点から、本研究はおおむね順調にすすんでいると考える。新型コロナウィルスの影響が落ちつき現地調査を着実に実施できていること。これまでの調査結果や先行研究を分析し、成果発表することができたこと。海外の先駆的な研究との結びつきを、翻訳というかたちで出版できたこと。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実施してきた現地調査を継続しておこないながら、インタビューの分析をすすめ、より具体的な漁師の水俣病経験を検討する。そのうえで、汚染された海と新たな関係を築きながら生きる漁民のありようを描きつつ、それがいかに「被害を中心に据えた研究」を乗り越えうるか検討する。
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