研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、拷問から生き延びた女性たちを被害者や犠牲者として一括りにせずに「物語的真実」を聞き取ることにある。物語的真実とは、必ずしも歴史的事実と一致するとは限らない、当事者の記憶あるいは解釈にもとづいた経験・感覚的な真実のことである。被害者や犠牲者という枠組みで見られてきた、あるいは当事者もそれ以外の言葉を持たなかった女性たちが、傍らから見れば壮絶であろう終わりようのない痛みを抱えながら、どのように現在まで生き抜いてきたのか。移行期正義の一環として遺された証言とは異なる語りを収集し、軍政そのものを「政治・社会的真実」からだけでなく、権力の中心ではないところから立体的に記述しとらえなおす。