研究課題/領域番号 |
23K01030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中野 泰 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20323222)
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研究分担者 |
川島 秀一 東北大学, 災害科学国際研究所, シニア研究員 (30639878)
小谷 竜介 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 上席研究員 (60754562)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 津波 / 語り / 意識 / 民俗 / ハザードマップ / 民俗学 / 協働 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、危機的避難状況下にあらわれる日常の意識をトータルに捉える作業を通じて、民俗学的な防災地図を、住民との協働によって作成し、今後の減災とともに震災の経験的知識の継承に資することを目的とする。本研究では、この防災地図を、フォークロリスティック・ハザードマップと名付け、当事者、すなわち、避難する者の観点に立って、津波(東日本大震災時)の避難行動についての語りを資料とし、避難行動の効率性を促進させたり、阻害させたりする日常の意識を明らかにしながら、住民と協働してフォークロリスティック・ハザードマップを作成し、防災・ 減災の経験知の継承をはかるものである。
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研究実績の概要 |
初年度である本年は採択確定後、8月に第1回研究会をオンラインで開催した。この研究会においては、メンバーがこれまで積み重ねてきた研究成果の共有をはかり、科研の今後の方向性について議論した。特に、今後、試作することになる、フォークロリスティック・ハザードマップについては、様々な意見が出され、マップ作成の前段階として検討すべき点をめぐって継続して議論することとなった。本科研は民俗学分野の研究者で構成されるが、異なる関心から意見が交わされ、有意義な研究会となった。 この研究会を踏まえて、当初の予定通り大学の夏季休暇中である9月中旬に岩手県陸前高田市小友地区において合同での調査を行った。そこでは小友地区コミュニティーセンターの協力を得て、東日本大震災における小友町における津波避難行動、避難生活について調査を行った。また、東日本大震災にかかわる資料を借用し、関連する聞き書きを実施した。広田地区においては、津波記念碑、避難にかかる神社・小祠等の所在、および、地形や景観を予察的に調査し、あわせて金石文データを収集し、聞き書きも実施した。この成果は、調査中にも議論しあった。 そして3月には広田地区コミュニティセンターの協力を得て、津波避難行動、避難生活について合同の調査を行った。これら聞き書き調査のほかに、個人による津波到達碑・線の収集記録、災害対策本部作成の震災活動記録、自主防災会、陸前高田市地域女性団体協議会の震災記録等の資料を入手した。メールを通じて知見をかわし、かつ、収集資料の共有を進めたが、予想を超えて、被災にかかわる記録作成が進められていたことがわかった。現在はこれらの整理を行うとともに、機能や変遷についての分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、計画通り小友地区において合同での調査を実施することができ、広田地区においても津波記念碑等の所在調査や、合同調査も実施することができた。現地の方々のご協力によって円滑に遂行することができた点は、大きな進展であった。今年度は学会発表や論文等の形で成果の公刊に至ったものは少ないが、研究者それぞれの様々な意見を通じて、ハザードマップ作成に向けて、歴史・生活にかかわる資料収集に重点を置く方向性を改めて確認できたのも研究の深化の上、重要であった。とはいえ、予想を越える多くの記録を入手できたことも加わり、今年度中に、ハザードマップの試作・協働にこぎ着けることはできなかった。この方向性に沿って、研究会の開催を通じてさらに議論をし、ハザードマップに向けた準備を進めて、翌年度に試作を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、7月に研究会を開催し、ハザードマップにかかわる仮説を議論し、調査準備を進める。9月には、広田地区の集落において、津波避難行動・避難生活を中心とする合同の調査を行う。その成果を、11月に開催する研究会で議論しながら、調査データ等を共有し、整理・分析を進め、関連学会で発表を行う。3月には、広田地区で調査を行った集落において、自主防災組織の協力を仰ぎ、フォークロリスティック・ハザードマップを協働して試作し、あわせて中間報告会を開いて、問題点を確認、解決策を検討する。
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