研究課題/領域番号 |
23K01037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
里見 龍樹 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30802459)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | サンゴ礁 / メラネシア / 自然の人類学 / 科学人類学 / 人新世 / 多地点民族誌 / ソロモン諸島マライタ島 / 自然 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者が調査地としてきたソロモン諸島マライタ島では、アシ(海の民)と呼ばれる人々が、サンゴ礁に人工の島々を築き、漁撈を主な生業として暮らしてきた。しかし近年、地球温暖化によるサンゴ礁生態系の崩壊などにより、アシの生活が危機にさらされていると言われる。そうした中、同島では複数の国際NGOによるサンゴ礁保全プロジェクトが進められている。それでは、このような保全プロジェクトの現場では、現地の人々と科学者・活動家の双方において、「自然」像のいかなる変容が生じているか? 本研究ではこのような問いに、メラネシアでのフィールドワークと科学人類学のアプローチを組み合わせて取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、グローバルな気候変動を象徴する「脆弱な生態系」と呼ばれるサンゴ礁に注目し、現代世界における科学的知識と在来知の関係の動態を記述すること、さらには、そうした記述を通して現代的な「自然の人類学」の実践例を提示することを目指している。具体的には、研究代表者がこれまでフィールドワークを行ってきた、ソロモン諸島マライタ島のサンゴ礁居住民についての民族誌と、日本国内におけるサンゴ礁科学の現場での科学人類学的な研究を結び合わせ、現代のサンゴ礁をめぐる自然=文化的動態を記述・分析する作業に取り組んでいる。 本研究の実施にとっての支障として、ソロモン諸島での現地調査の際にこれまで用いていた航空路線が、国際線・国内線ともに廃止されたため、大学の休暇期間にソロモン諸島に渡航して調査を行うことが困難になったことがある。このため、令和5年度はやむなく海外での現地調査を見送り、過去に得られたデータの再分析に取り組んだ。他方で、日本国内のサンゴ礁科学の現場では年間を通して精力的なフィールドワークを継続した。これまでに訪問した研究機関として、東京大学大気海洋研究所、沖縄科学技術大学院大学(OIST)、琉球大学理学部、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設などがある。加えて、日本サンゴ礁学会研究大会にも参加して多数の研究者と交流した。 現代のサンゴ礁科学に関する科学人類学的な先行研究では、この分野における現代的な動きとして、伝統的な保全のアプローチから積極的な人為的介入へ、という図式が提示されてきた。これに対し、令和5年度のフィールドワークからは、現代日本のサンゴ礁科学が必ずしもこの図式に当てはまらず、むしろサンゴそれ自体がもつ適応力や生存可能性に注目していることが垣間見られた。ここに、先行研究の想定とは異なる「自然」像が立ち現れている可能性も踏まえ、次年度以降、継続的な探究を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソロモン諸島での現地調査は行うことができなかったが、日本国内でのフィールドワークを精力的に進め、国内のサンゴ礁研究者たちと協力関係を築くことができた。この関係を次年度以降の調査に活かしたい。また、次年度は、スケジュールを入念に調整した上でソロモン諸島での現地調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に実施することができなかったソロモン諸島マライタ島での現地調査(計3か月間)を実施する。加えて、日本国内のサンゴ礁研究の現場でもフィールドワークを継続し、多地点民族誌を積極的に実践する。これにより、本来の研究計画である、サンゴ礁をめぐる現代科学と在来知の双方の動態を民族誌的に記述・分析できるはずである。
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