研究課題/領域番号 |
23K01049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
安藤 馨 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (20431885)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | リベラリズム / 改革派認識論 / 公共的理由 / 宗教と法 / 認識論 / 政治哲学 / 宗教 |
研究開始時の研究の概要 |
民主的な政治的過程において宗教的信念や宗教的事実を理由として議論・決定を行ってはならないという制約によって価値観の多元化した社会における国家の(宗教的)中立性を保とうとするリベラリズムを実現すべきであるとする立場は「公共的理由のリベラリズム」と呼ばれ、法哲学・政治哲学における主流派を形成している。これに対して、クリスチャンのように特定の信仰を持つ人々からは、自らの宗教的信念が尊重するに値しない二級のものとして社会から排除されている、といった不満が提出されてきた。本研究では、宗教的信念の認識論的地位の問題を正面から取り扱い、それを一級のものとして取り扱うことと両立可能なリベラリズムを探究する。
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研究実績の概要 |
2023-25年度においては、リベラルな民主政を巡る現在の法哲学・政治哲学において支配的地位を占める、市民の政治的活動において市民が依拠してよい理由・信念から、包括的教説にもとづく宗教的信念・理由を排除する「公共的理由のリベラリズム」の批判的検討が目標とされている。2023年度は、論者の多数を信仰者が占める改革派宗教認識論の議論を検討し、そうした宗教認識論においても従来よりも世俗主義に神話的な結論が導かれうることを明らかにした。その結果の一部は「宗教と法」という論稿として法学教室誌に公表した。なお、この結果をより包括的に論じた論稿も執筆を終え刊行を待つ状態にある。宗教認識論に関連して、倫理的ヴィーガニズムを論ずる論稿「動物の道徳的地位を承認するということ」においては、その結論として、ヴィーガニズム支持者の道徳的信念がしばしば宗教的信念に類似した形で獲得されることを指摘し、種差別批判などの哲学的論議が、信仰者にとっての自然神学に類似した認識論的地位をしか占めていない可能性を指摘した。また、リベラルな社会において自身が一定の道徳的信念・宗教的信念を有してもいる裁判官の法的思考が、リベラリズムの前提として法的理由を非法的理由に優先させるということが如何にして可能かを検討し、行為理由に関する広義の帰結主義的見解が要請されてくることを明らかにした。この結果については、国内の研究会・国外学会において研究報告を行った。また、従前から行っているジェレミー・ベンタムの法思想史的研究に関連して、ベンタムのテクストを手がかりに、功利主義的な(それゆえリベラルな)性的解放が人々の宗教的信念による反感とどのように両立しうるかについても検討し、もうまもなく刊行される(校了済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績欄に詳述した通り、交付申請書にある通りの研究計画についてその中心部分は順調に進展し、その一部は刊行され、また関連する諸研究についても、それぞれ研究報告・刊行の各段階まで到達している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には今後も2023年度と同様の研究を遂行していくことが予定されている。ジェレミー・ベンタムの思想史的研究が、近代的リベラリズムの基盤について哲学的に考える際に、本研究の申請時に思っていたよりも重要であることが判明したため、ベンタムが論じていた宗教と性の問題を取り扱うべき必要を感じた。このため、近年の進展著しい、性の哲学についての研究を並行して進めることにしたい。
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