前近代日本の紛争解決に際しては、双方当事者の是非を決することよりも、両者の衡平感覚を充足させることが優先され、そのための法や社会慣行が多く存在したことが知られる。本研究では、中世の「折中」観念に由来するとされるこれらの制度が社会に定着していく過程を中世後期から近世を対象に検討するとともに、その結果を近代以降の紛争処理のあり方と比較することで、日本的紛争処理観念の特徴としてしばしば指摘される「白黒をつけない」ことを是とする考え方がどのようにして成立、定着していったのかを通時代的に明らかにすることを目指す。
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