研究課題/領域番号 |
23K01076
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中島 宏 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90507617)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 政教分離 / 信教の自由 / セクト / カルト / セクト規制 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、フランスにおけるセクト規制法制の現状と課題を分析することを通じて、現代の法治国家における宗教団体規制のあり方を検討したい。フランスにおいては、2001年に団体解散を含むセクト規制法が制定され、専門機関が「セクト的団体」に対する監視活動を行ってきた。しかし、制定から20年を経た今も、セクト規制法の適用事例は少なく、抑制的な運用が行われてきたように見える。本研究においては、フランスのセクト規制法制の当初の意図と、その後の規制方針の転換、そして現在の運用の実態を分析することを通じて、法治国家におけるセクト(カルト)規制の基本原則と課題を検討してみたい。
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研究実績の概要 |
今年度の研究活動においては、フランスにおけるセクト規制の沿革と現状について、その概要を明らかにすることができた フランスにおいては、90年代後半からセクト対策の必要性が指摘されるようになった。特に議会調査委員会報告書がセクトのブラックリストを掲載したことにより、官民一体となった反セクト政策が推進された。その一環として、租税法の解釈変更によって宗教団体に対する莫大な追徴課税が行われたのもこの時期であった。しかし、法的安定性や国家の宗教的中立性という観点から、2000年代に政策転換が行われることになる。 2001年に制定されたセクト規制法は、セクトそのものを狙い撃ちにする特別法ではなく、セクト的性格を持つ団体を規制する一般法として制定された。特に人の精神状態を悪用する行為を規制するアイディアは注目に値する。また、2005年首相通達は、セクト対策と政教分離原則の調整の必要性を指摘し、公権力によるセクトの定義やブラックリストに基づく対策を明確に否定した。この点は90年代からの大きな転換となった。さらに2011年、法解釈の変更に基づく上記課税処分が、ヨーロッパ人権裁判所によって条約違反と判断されたことも大きな影響があったものと思われる。セクト監視機関も近年改組されている。セクト的逸脱行為を監視・分析する専門機関として首相府に設置されたミヴィリュードは、会計院からの批判を受けて、2020年に規模が縮小される形で内務省へと移管された。 以上のように、フランスにおけるセクト政策は2000年前後に大きな転換を迎えた後も、少しずつ修正が行われており、今後も検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はフランスにおけるセクト対策の概要を明らかにすることを目指した。その研究成果は、中島宏「フランスのセクト規制」日本の科学者58号(2023年6月)においておおむね明らかにすることができた。また、セクトそのものに対する規制ではないが、フランスでは共和国原理尊重強化法が2020年に制定されており、宗教団体に対する規制が強化されている。その主な内容を日仏法学32号(2023年10月)において立法紹介として検討することができた。セクトを取り巻く従来の規制のあり方と、近年の新たな立法について主な内容を公表できたことからすると、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、宗教法学会における研究報告を予定しており、前年度に明らかにした研究成果をより詳細な形で公表したい。特にフランスにおけるセクト規制が抱えている課題を明らかにすることによって、日本における宗教規制において特に留意すべきポイントを検討してみたい。報告後の質疑応答等を通じて、他の研究者からのフィードバックを得る機会としたい。研究報告の内容は、修正を加えた上で、学会誌に公表する。
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