研究課題/領域番号 |
23K01081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大日方 信春 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (40325139)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 表現の自由 / 著作権 / フェア・ユース / パロディ / 憲法適合的解釈 |
研究開始時の研究の概要 |
IT技術の発達・普及により誰もが「表現の権利者」「表現の利用者」となり得る時代になった。それに伴い著作権に関する知識と意識の普及がなされている。ただ、知識と意識の普及は、著作権者による過剰な権利行使および表現者の萎縮を生んでもいる。下位法である著作権法を制限する上位法たる憲法に基づく法理論が確立されていないことが背景にある。 本研究の目的は「著作権意識」の向上がときに「著作権の過剰」「表現者の萎縮」を生んでいる現状を解消するために著作権の効力を制限する表現の自由の法理を提示することである。また、この研究はアメリカの「フェア・ユースの法理」を参照分析することによってなされる。
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研究実績の概要 |
IT技術の発達・普及により誰もが容易に表現者となり得る時代になっている。その反面で、各種の教育・啓蒙活動により「著作権意識」も時代と共に向上してきている。ところが、こうした著作権意識の向上を逆手にとって、本来的には許されているような著作物利用まで、ときに表現者を萎縮させるような手法により、表現を自己規制させようとするような企図も見受けられるように感じる。 こうした状況を受けて、本研究の目的としては「『著作権意識』の向上がときに『著作権の過剰』『表現者の萎縮』を生んでいる状況を解消するために著作権の効力を制限する表現の自由の法理を提示することである」と申請書に掲げている。アメリカの著作権制限法理に「フェア・ユースの法理」がある。これは著作権が制限される場合を法令に個別に規定しておくのではなく、一般的に「フェアである」と考えられる著作物の利用については、それを事後的に判断することによって権利侵害を免責しようという表現の自由保護法理として理解されてきている。本研究は、彼の国のこの法理を詳細に分析することにより、わが国におけるその導入可能性について検討するものである。 第1年目にあたる本年は、著作権者による権利行使により(あるいは、著作権者であることを背景にした著作物利用についての注意喚起等により)、著作物利用について躊躇が見られたと思われる事例を集めている。具体的にはパロディに該当するのではなかろうかと思われる事例、報道目的での著作物利用といえそうな事例等を集めて、その背景等も含めて検討している。 こうした研究遂行の成果として、研究課題採択前から準備していた単著の出版と憲法体系書内における著作権およびひろく知的財産権と憲法理論に関する記述の充実をあげることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、補助事業期間延長申請により認められていた先行する研究課題と同時並行的に本研究を進めることになった。ただ、本研究は、先行する当該研究課題の延長線上にある課題であると言えるので、同時並行的に研究を進めることに支障はなかったといえる。 また、先行する研究課題の成果として、単著等を上梓しているが、その中にも本研究の成果による記述がある。 したがって、本年は先行する研究課題と本研究課題の2つの研究課題を同時に遂行することになったが、研究の進捗状況としては「(2) おおむね順調に進展している。」に該当すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、著作権および広く知的財産権のフェア・ユースの法理の母国といえるアメリカの判例法理を検討する必要がある。その際には、所属研究機関で契約しているアメリカ判例データ・ベース(Lexis)を利用すると同時に、法理論については洋書を購入して分析を進めていく。また、必要に応じて、これまでの研究活動によって構築した実務に関する人脈も利用(ヒアリングの実施)していく予定である。 また、日本法へのフェア・ユースの導入(いわゆる「日本版フェア・ユース」)については、政府およびその委託による研究成果も公表されている。アメリカの判例法理と「日本版フェア・ユース」の共通点・相違点については、これらを分析することによって明らかにしていきたい。
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