研究課題/領域番号 |
23K01090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
倉田 原志 立命館大学, 法学部, 教授 (10263352)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 労働関係 / 人権 / ドイツ / 人権保障 / 法律 / 裁判 |
研究開始時の研究の概要 |
憲法の人権保障は、歴史的には、国家に、制定する法律が人権を侵害しないようにするという消極的な義務を課すということから出発し、依然としてその役割は大きい。しかし、労働関係においては、労働者と使用者とが対等とはいえないことから、労働者を保護するために、国家は積極的に法律を制定して、憲法の人権保障を具体化することが必要となる。そこで、本研究は、労働関係において人権が法律によってどのように具体化されうるのか、また、法律によって十分具体化されていない場合に裁判所はどのように対応できるのか、についてドイツでの議論を素材として検討する。
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研究実績の概要 |
憲法の人権保障は、歴史的には、国家に対して、制定する法律が人権を侵害しないようにするという消極的な義務を課すということから出発し、依然としてその役割は大きい。しかし、労働関係においては、労働者と使用者とが対等とはいえないことから、労働者を保護するために、国家は積極的に法律を制定して、憲法の人権保障を具体化することが必要となる。そこで、本研究は全体としては、労働関係において人権が法律によってどのように具体化されうるのか、また、法律によって十分具体化されていない場合に裁判所はどのように対応できるのか、についてドイツでの議論を素材として検討するものである。 2023年度は、法律制定の際に指針となると考えられる、ドイツ基本法1条1項が定める人間の尊厳は、どのようなものであり、労働法においてはどのような意味をもっているかの検討をすすめ、連邦労働裁判所の判決のなかで、人間の尊厳がどのように把握されているかを、特にドイツ基本法1条1項が他の条項と結びつけられることなく、単独で適用されている判決を中心に検討した。連邦労働裁判所の判決を含むドイツ労働法理論に大きな影響力をもったとされる連邦労働裁判所初代長官ニッパーダイの人間の尊厳論は、議論の出発点をなすといえるものであること、基本法1条1項だけに依拠した判決は少ないが、ニッパーダイ長官の時代にはニッパーダイの理論が前提とされたものの、それ以降の判決の中ではニッパーダイの論文の引用やニッパーダイ理論を前提とする連邦労働裁判所の判決の引用はないことが明らかにできたと思われる。基本法1条1項の人間の尊厳は、基本法2条1項(人格の自由な発展の権利)や基本法20条1項(社会国家原則)と結びついて多くの議論が展開されており、労働関係における人間の尊厳の検討にあたっては、これらの検討が課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、人間の尊厳とならんで、法律制定の際に指針となると考えられる、ドイツ基本法20条・28条が定める社会国家原則についても検討することを予定していたが、人間の尊厳について、憲法学での議論の状況も含めて検討するのに時間を要し、社会国家原則については検討できず、また、人間の尊厳についても、他の条項と結びついた保障についても検討できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、2023年度に検討できなかった事項、つまり、法律制定の指針となると考えられるドイツ基本法20条・28条が定める社会国家原則について検討する。 それに続いて、2024年度の検討予定事項である、労働法の規制緩和が進行していることを踏まえて、労働法の規制緩和に憲法上の限界があるか、あるとすればそれはどこから導かれ、どのような限界かについて検討する。これは、憲法による立法裁量の統制のあり方の検討に位置づけられ、ドイツでの立法裁量と保護義務との関係に関する議論を労働関係に即して検討することとしたい。ドイツでは当該法律が過少保護ではないかを裁判所がどのように判断するかは、いまだ定説がない状態であるので、有期雇用・労働者派遣などの具体的な労働立法に関する連邦憲法裁判所・連邦労働裁判所の判決と学説を検討して、判断の枠組みを明らかにすることを目指す。
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