研究課題/領域番号 |
23K01096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土井 真一 京都大学, 法学研究科, 教授 (70243003)
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研究分担者 |
伊藤 健 弘前大学, 人文社会科学部, 助教 (40849220)
岸野 薫 香川大学, 法学部, 准教授 (70432408)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 違憲審査基準 / 職業選択の自由 / 目的手段審査 / 論証責任・論証度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、職業選択の自由の領域に焦点を当てて、これまでの最高裁判例を綿密に分析し、その違憲審査の枠組みを解明する。そして、アメリカの最高裁判例・学説の展開と比較しつつ、各事件における具体的解決の妥当性と憲法判断の検証可能性を両立させるために、より柔軟な適用を可能とする日本独自の違憲審査基準論の構築を目指す。そのために、目的審査と手段審査及び実体的基準と手続的基準の関係を明確にし、審査基準を設定するための考慮事項、及び審査基準の定式の具体化や個別化に関する問題等について考察する。
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研究実績の概要 |
まず、令和5年6月4日に、基盤(C)「『救済法』理論の比較研究」(研究代表者・松本哲治教授)との合同で第1回研究会を開催し、音無知展准教授による「刑事手続における救済」と題する研究報告と見平典准教授による「公共訴訟における救済の新たなアプローチの可能性」と題する研究報告が行われた。次に、令和5年8月22日に第2回研究会を開催し、土井真一による「職業選択の自由に関する最高裁判例を読み直す」と題する研究報告が行われた。また、令和5年11月19日に上記基盤(C)との合同で第3回研究会を開催し、高橋正明准教授による「社会的・経済的・文化的権利の救済」と題する研究報告と白水隆准教授による中間まとめが行われ、さらに、令和6年1月21日に第4回研究会を開催し、守谷賢輔准教授による「先住民の権利の侵害に対する救済」と題する研究報告が行われた。 これらの研究会での意見交換を踏まえて令和5年度に行った研究実績は、以下の通りである。 土井は、研究代表者として、研究全体を統括するとともに、職業選択の自由に関する日本の最高裁判決を検討し、判例理論の再構成を図ることで問題の所在を明確にするとともに、Richard H. Fallon, Jr.による違憲審査基準の位置づけに関する研究を着実に進めている。 岸野薫は、社会経済領域における司法の自己抑制論について、Oliver Wendell Holmes Jr.を通じて考えるため、必要な文献資料の収集を行う傍ら、その読解及び当時の合衆国最高裁判例の分析に着手している。 伊藤健は、経済的自由に関する日本の判例を踏まえて、実体的基準と手続的基準の関係を整理し、日本の判例における違憲審査基準について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体について、土井の統括の下、各研究者が、研究課題及び研究の基本的視座について共有した上で、それぞれが分担するテーマを確定し、その研究を着実に進めている。 土井は、職業選択の自由に関する日本の最高裁判決を検討し、判例理論の再構成を図ることで、問題の所在と違憲審査基準論の新たな可能性を明確にしようとしており、この点について、令和6年度中に成果を公表する予定で取り組んでいる。またFallonによる違憲審査基準の位置づけに関する文献の読解を進め、違憲審査基準論が裁判所と議会などの政治部門との間の役割分担に関する側面を強く有していることから、憲法解釈の多元性を可能にする理論の構築と、違憲審査基準論の体系的位置づけについて検討を進めている。 岸野は、合衆国最高裁判例や文献の読解を通じて、合理性基準の源流とされるMugler v. Kansas (1887) 以降の判例法理と、Oliver Wendell Holmes Jr.の法理論との比較分析を進めている。 伊藤は、経済的自由に関する日本の判例を検討する際に前提となる手続的基準の研究として、違憲審査において論証度がどのように機能しうるかをまとめ、「違憲審査における『論証度』」を公表した。 このように国内における各研究者の研究は確実に進んでいるので、現在までの進捗状況を、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も、土井の統括の下、研究の基本的視座及び研究の進捗状況について共有しつつ、各研究者の独自性を活かして、各テーマについて研究を進めていく予定である。まず、令和6年度は、対面で2回の全体会・研究会を開催する。第1回の全体会・研究会は、8月~9月に開催し、研究の進捗状況について調整を行うとともに、経済的自由等を専門とするゲストスピーカーを招いて議論を行う。また、12月~1月に第2回全体会・研究会を開催し、令和7年度に向けてさらに研究を深める予定である。 次に各研究者の個別の研究計画について、まず土井は、職業選択の自由に関する日本の判例理論の再構成を図り、問題の所在と違憲審査基準論の新たな可能性を明確にして、その成果を公表する予定である。さらに、Fallon研究を進め、救済法に関する検討と関連づけて、憲法解釈の多元性を可能にする理論の検討を深めるように努める。 岸野は、上記「進捗状況」に記した分析を1次文献・2次文献の読解を通じてさらに深化させ、社会経済領域におけるOliver Wendell Holmes Jr.の法理論の解明に努める。 伊藤は、経済的自由に関する日本の判例分析を深化させ、目的審査の基準と手段審査の基準の関係についての検討を進める。 なお、令和6年度は、伊藤により、アメリカ合衆国における文献調査及び研究者等へのインタビューの実施を予定している。
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