研究課題/領域番号 |
23K01123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑村 裕美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70376391)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | デジタル化 / テレワーク / 在宅勤務 / テレワークの請求権 / 在宅勤務の権利義務 / 安全配慮義務 / 住居の不可侵性 / ドイツ・モバイルワーク法案 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、デジタル化の進展により技術的に容易となり、かつコロナ禍で多くの労働者が経験したテレワークについて、その開始段階での労働契約上の権利義務関係を整理した上で、ポスト・コロナ時代の新たな就労形態の確立を見据え、テレワークを求める労働者の権利を何らかの形で創設することの当否を、対象者や条件、使用者との権利調整のあり方を含めて検討し、今後の雇用・労働政策に広く応用可能な示唆を得ようとするものである。具体的には、労働者が在宅勤務を命じられた際にこれに応じる義務やテレワークを請求する権利についての現行法上の帰結を整理・検討した後で、ドイツ法、EU法を中心に比較検討し、日本法への示唆を得る。
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研究実績の概要 |
本研究は、デジタル化の進展により技術的に容易となり、かつコロナ禍で多くの労働者が経験した在宅勤務等のテレワークについて、それを求める労働者の権利を導入することの可否など、ポスト・コロナ時代の新たな就労形態の確立を見据えた検討を行うものである。初年度にあたる令和5年度では、ドイツにおけるテレワークの普及状況を確認するとともに、理論的観点から、テレワークに関する労働者の権利義務についての基本的考え方やコロナ禍での特別法などに関する基礎的な知見の修得に努めた。また、テレワークに関係する日本の法制度(労働時間制度、配置転換など)をめぐる議論状況や法解釈のあり方についても整理した。研究の手法としては文献調査を中心としつつ、ドイツでの現地調査も行うことで知識の正確性を担保した。ドイツでは今後の新たな働き方をテーマとするシンポジウムで日本法の講演を行い、デジタル化が進む社会における新たな働き方の行方についてドイツの専門家と意見交換を行った。 ドイツでは、全体で2割程度(2024年2月時点で24%)の労働者が(部分的の場合を含めて)テレワークに従事しているが、ドイツでは労働者は出勤すべきとする考え方がいまだ強く、他のヨーロッパ諸国と比較してドイツにおけるテレワークの普及率は低い(ドイツ連邦労働社会省の分析)。このような状況下で、ドイツではテレワークについて一定の法規制を行う構想が2020年ごろからある。2021年には、労働者のテレワークの求めを使用者が拒否し得る場合を制限する制度や、使用者が拒否する場合の説明義務ないし説明を求める労働者の権利について検討することが政権内で合意されたが、現時点でいまだに立法的対応がなされていないことなど、現在のドイツ法の状況を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツのテレワークに関する基礎的な条文理解や学説の議論状況、現在の企業の実情などについての基礎的調査について、おおむね当初の予定通りに進めることができた。テレワークに関するドイツの立法動向については、2021年末の新政権発足後は、それまでの立法に向けた議論がやや停滞している状況で、最新の議論についての資料収集は限られたものとなった。新法の動きについては今後さらに検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
住居の不可侵を保障する憲法規定や労働者の権利義務に関する学説の議論についての検討を進めるとともに、ドイツにおいてテレワークがそれほど広がっていない背景についても分析したい。そして、テレワークに関する法規制のあり方については、ドイツにおける今後の議会の状況や政府の方針を注視しつつ、学説の議論を広く把握し、課題の検討を深めていきたい。
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