研究課題/領域番号 |
23K01126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中窪 裕也 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (90134436)
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研究分担者 |
藤木 貴史 法政大学, 法学部, 准教授 (20846399)
CHAFEE・JR JOHN・BYRD 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (70909564)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 労使関係法 / アメリカ法 / 労働組合 / 団体交渉 / 組合組織化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アメリカの労使関係法の大きな特徴である「多数決による排他的交渉代表制度」の仕組みと具体的な運用実態を、近年、大きな注目を浴びたスターバックスやアマゾンの事案を主たる素材として、掘り下げて検討するものである。①労働組合による組織化活動、②代表選挙を通じた団体交渉関係の確立、③その後の協約交渉と協約成立後の労使関係、という一連のプロセスの全体に目を配りながら、現在の法の機能と問題点を明らかにし、さらに、具体化している立法改革の動向についても考察した上で、日本の法制との比較を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、アメリカの労使関係法の特徴である「多数決による排他的交渉代表制度」の運用実態を、新たに選挙で組合が勝利して注目されたスターバックスとアマゾンの事案を主たる素材として、掘り下げて検討し、それを労使関係法全体の中で位置付けようとするものである。2023年度における研究の実績は、次の3点である。 第1に、上記2社のその後の労使関係をフォローし、いずれも実際に団体交渉は進展せず、労働協約の締結まで至っていない上に、不当労働行為の申立てが多数なされ、全国労働関係局(NLRB)の命令が出される過程にあることを確認した。それらの事案で命令が出されると、今度は訴訟で争われることは確実であり、当事者間における自主的な交渉の進展の可能性とあわせて、今後の展開が注目される。 第2に、労働組合の組織化一般に関するNLRBの動きを分析し、特に、長年の先例を覆して使用者の義務を厳格化した2023年8月の判断(Cemex事件)や、使用者の不当労働行為に対する救済を強化する事務総長の方針、他方で相当数の使用者がNLRBの組織構造そのものが憲法違反であると主張する最近の動向を確認した。また、NLRBが審理を行っている間に裁判所に請求する暫定的な差止命令の要件について、連邦最高裁が上告を受理し、近いうちに判断が示される予定であることを確認した。 第3に、2023年は日本でもストライキが注目を集めたが、アメリカでも自動車労組や映画の脚本家、俳優など多数のストが発生し、社会にインパクトを与えた。また、2023年6月には、連邦最高裁がストに対する使用者の損害賠償請求を従来よりも広く認める判断(Glacier事件)を下して議論を呼んだ。本研究では、これらストの問題について、日本との比較を含め、いくつかの論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」の欄に記載したように、3つの点で研究が進展し、現在進行形で展開している労使関係の実態および法理の状況をフォローすることができている。アメリカでも日本でも、ストライキを含む労働組合の活動への関心が高まったのは、本研究の必要性を裏付けるものであり、今後も現場と法理の動きを着実に分析していく予定である。 また、2023年5月に研究代表者が行った現地調査で、スターバックスを組織している労働組合の聞き取り調査を行うことができ、さらにニューヨーク大学で開催された労働法の会議に出席し、雇用・労働法の最新の情報を得るとともに、大学の研究者や全国労働関係局(NLRB)の関係者と意見交換を行った。これらの情報は、研究会を通じて研究分担者および研究協力者と共有し、それぞれが研究を進める上での資料として活用している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究代表者と研究分担者、研究協力者が、定期的に研究会を通じて意見交換をしつつ、それぞれの担当分野の研究を進める。特に、上記「研究実績の概要」の欄に記載した内容のうち、第1(スターバックスとアマゾンの労使関係の進展)と第2(組合の組織化を中心とする労使関係法の動き)については、連邦最高裁や全国労働関係局(NLRB)の事案の状況を見ながら、2024年度中に論文にまとめて発表する予定である。 また、2024年度もアメリカで現地調査を行い、NLRBを含む関係者のヒアリングを行うことを計画している。
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