研究課題/領域番号 |
23K01151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
神馬 幸一 獨協大学, 法学部, 教授 (60515419)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 終末期医療 / 臨死介助 / 医師介助自殺 / 事前指示法制 / ドイツ / 事前指示 / ドイツ語圏 |
研究開始時の研究の概要 |
今後,多死社会を迎えるに当たって,我が国における民法の制度上も,患者の事前指示及び医療代理に関する法整備を導入していくかたちで進展していくように思われる。そのような状況が見込まれるにもかかわらず,民法上,議論されている患者の事前指示及び医療代理に関する法整備と刑法における自殺・他殺規制との調整に関して,その学問的知見は,従前,我が国で十分に蓄積されてはきたとはいえない。本研究は,その調整原理を比較法的な観点から明確化するものである。
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研究実績の概要 |
ドイツにおける臨死介助法制の手続化に関する研究を進めた。具体的には,①解釈論としての「事前指示法制」と②立法論としての「自殺幇助法制」とに関して,各々の領域で議論されているところの手続化の顕れ方を調査した。 ①事前指示法制に関しては,ドイツでは,当地の民法(世話法)上の枠組みに従って,治療中止が実施されており,かかる制度運用の刑法上の意味が問題となる。特に,この手続履践の不可罰的効果を巡る問題性は,当事者が手続的要件を遵守したにもかかわらず,それが患者の真意に沿わなかったという刑法的不法のみが現実化した場面に顕著となる。この点に関して,事前指示における手続履践を違法性阻却(正当化)事由として位置付けるか,それとも責任阻却事由(錯誤の問題)に過ぎないものとして理解するかという議論状況を明らかにした。 ②自殺幇助法制に関しては,それに関する立法経緯及び審議中の法案内容を参照しながら,そこでの手続化に関わる議論内容が紹介された。なお,当地において自殺幇助法案は,2023年7月6日付けの連邦議会本会議で否決された。私見によれば,現在までに提起された各法案は,広範な自殺の前提条件のみならず,詳細な手続的要件の設定により,総じて自殺予防に主眼が置かれているものと考察される。すなわち,全ての法案において,事実上,自殺の実施を阻む多くの高い障壁が示されており,それは,様々な義務的面談及び待機期間を介して具体化されている。このような手続的規制の導入には,個人の自己決定に関する評価を第三者に移譲する医事(刑)法的な傾向が垣間見える。しかし,そのような手続によれば,(医師)介助自殺は,客観的基準による判断が重視される結果として,他者の価値観に拠らない個人の核心的な決断であるべきことが軽視されうることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の事前指示及び医師介助自死の問題に関して,国内外の研究者との情報交換を元に,主として国外における議論状況を整理中の段階にある。特に,ドイツ語圏における法的状況を点検する過程で,そこにおける規制の本質を明確化するようなかたちで,個々の論点をまとめている段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続的に,患者の事前指示及び医師介助自死理に関する比較法的な確認作業が必要である。ここにおいては,患者の事前指示及び医師介助自死に関する公的規制の設定により,どのような影響が医療現場に生じるのかというような実務的な問題も対象となる。更に,「規制手続」に関する検証が必要である。患者の事前指示及び医療代理に関する公的規制を設ける場合,関係者間の利益対立を効果的に調整する手続が必要となる。特に,そのような規制により影響を受ける患者家族の状況も考慮する必要性が生じる。この点に関して,法的・倫理的・社会的妥当性を有する制度設計の在り方を検討する。
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