研究課題/領域番号 |
23K01157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
林 誠司 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20344525)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 医事法 / 民事責任 / 不法行為法 / 医療政策 / 社会福祉政策 / 民法 |
研究開始時の研究の概要 |
医療の場で過誤や説明義務違反があったとされるとき、どのような要件の下でどのような民事責任を医師や病院が負うべきかという問題は、これまでそれぞれの場面について個別に議論されてきた。しかし、例えば委縮医療や医療資源の不適切な配分等の問題を生じさせないためには、医師等が民事責任を負うための要件やその内容を理論的に整理し、医師・患者双方に見通しを良くする必要がある。また、司法の場で実現可能な理論を構築するには、医療政策や社会福祉政策の在り方等をも視野に入れる必要がある。本研究は、これらの必要性を踏まえた医療の場での責任法理を構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
令和5年度においては、第一に、医療過誤訴訟に携わる実務家等との意見交換や議論等を通して、訴訟の場での医師責任法ないし学的視点からの医師責任法にとどまらない医師責任法の実相を明らかにすることに努め、医療過誤を専門とする弁護士らによる全国組織「医療事故情報センター」の協力の下、説明義務法理に関する法外在的視点に基づく知見を得ることができた。その成果は令和6年度中に公表される。 第二に、ドイツの文献(Koller, MedR2014,697等)の購読を通して、実践哲学(生命倫理)に関する議論とドイツおよびEUにおける医師責任法の議論が相互にどのようにして、またどのような影響を与えたかを検討することにより、①説明義務の領域での患者個人の権利の強化に代表される、一定方向での議論の収斂とそれに基づく医事法の国際的統一が見られる領域が存在する反面、②積極的安楽死や消費的胚研究に代表される、1つの社会(国)の内部又は複数の社会(国)の間で著しい意見の相違を残す領域が存在し、問題領域に応じた法外在的要素の考慮が必要であること、②の領域では各社会における支配的な宗教観念、文化的伝統、支配的エリートの利益がこれらの意見の相違をもたらしていることについての知見を得た。 第三に、統合失調症の任意入院患者の無断離院防止策についての説明義務に関する最高裁判決の検討を通して、医療資源の適切な配分という視点から医療関係者に課される法的義務の限界に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医師責任法体系のあり方を、民事責任法のみならず情報法や医学研究に関する法的規制を含む横断的視点から問い直すと共に、これらの法内在的視点からだけでなく医療政策や社会福祉政策などの法外在的・領域横断的視点から考察するとの本研究課題からみたとき、令和5年度における成果は、実践哲学(生命倫理)や医療資源の適切配分というもっぱら法外在的な視点からの知見(もちろんそれ自体有益であるが)にとどまった。 しかし、研究対象が広範に及び、また各対象それぞれが、それだけで1つの研究課題となりうる様々な深遠な問題を抱える以上、本研究課題においてもそれらの対象について地道に1つ1つ検討を重ねていく作業にならざるを得ない。したがって、令和5年度における検討が生命倫理や医療政策からの視点に基づくものにとどまるとしても、本研究課題全体から見れば、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においては、前年度に引き続き、民事法学に関する文献にとどまらない日本語文献及び外国語文献の購読を通した知見の獲得のほか、これと並行して実証的研究としての裁判例の検討を行う。さらに、外国語文献の購読だけでは明らかにならない医師責任法の実相に関する知見を得るため、ドイツでの資料収集及び現地の研究者との意見交換を予定している。
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