研究課題/領域番号 |
23K01160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯田 秀総 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80436500)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 共同行為 / 共同保有 / 公開買付け / 大量保有報告 / 短期売買差益返還義務 / 金融商品取引法 / 特別関係者 / 共同保有者 / コーポレートガバナンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、金融商品取引法の公開買付規制、大量保有報告規制、および、短期売買差益返還義務の規制の発動を画する株式の持分割合の算定に関して、複数の者が協調的に共同行為している場合にこれを合算して持分割合を計算するのかどうか、また、合算するとした場合にはどのような共同行為をしている場合に合算するべきであるのかについて、規制横断的に解明することにある。日・英・米の制度の比較を通じて、あるべき規制のあり方を解明し、将来の、金融商品取引法の各規制の見直しに際しての理論的な基礎を提供するという社会的な貢献をすることが本研究の究極的な目的である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、金融商品取引法の公開買付規制、大量保有報告規制、および、短期売買差益返還義務の規制の発動を画する株式の持分割合の算定に関して、複数の者が協調的に共同行為している場合にこれを合算して持分割合を計算するのかどうか、また、合算するとした場合にはどのような共同行為をしている場合に合算するべきであるのかについて、規制横断的に解明することにある。 本年度は、まず、現在の日本法が形成されるに至った沿革を調査分析した。当時の立法担当者の解説等はもちろんのこと、国立公文書館にて「法律案審議録(証券取引法の一部を改正する法律案)」などの資料も閲覧して、検討経緯をも調査した。その結果として、現在の規制を作成する際の別の案としては、一定の場合には共同行為者として推定して立証責任を転換するという英国型の案も検討されていたが、そのような規制は刑事法の原則の極めて例外的な場合に認められるものであることなどの理由で採用されなかったであろうことが分かった。 また、英国の公開買付規制における共同行為概念の近時の改正について検討するとともに、米国における短期売買差益返還義務について共同行為概念が問題となった判例を検討した。 これらの検討結果をふまえて、国内外の専門家と意見交換を行った。また、金融審議会の公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループに委員として参加し、大量保有報告書規制における共同保有者概念の改正提言の検討に際してこれまでの検討結果から得られた知見に基づいて意見を述べる機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立法の沿革の調査や、比較法の検討によって、一定の手掛かりを得ている。また、金融審議会・公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループにおける意見交換、資本市場研究会およびソウル大学教授らとの研究会における研究発表などにおいて意見交換などを通じて有益な助言・示唆を得ることができている。特に金融審議会・公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ報告およびこれに基づいて金融庁が国会に提出した改正法案の内容は、基本的に私見における問題意識やその解決策として提言しようとしていることと同一の方向性にあり、本研究によって得られた知見の社会実装に貢献することもできている。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、2023年度に得られた知見を論文にまとめて発表する作業を行う。 第2に、日・英・米の3か国における機関投資家の協調行動について、各国のルールがどのような影響を与えているかを評価する。この作業により、ルールの影響力を考慮の上、あるべき共同行為概念のあり方を考察できるようになる。具体的には、各国の機関投資家の動向についてのデータ分析およびケーススタディ、ならびに、先行研究の検討の文献調査の方法による。特に大量保有報告規制における共同行為概念のあり方については、世界的に研究関心が高い問題である。この問題については、膨大な数の先行研究があり、これを整理しつつ、各国の法制度とその背景にある社会的な状況との相互関係の分析に注力することを予定している。
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