研究課題/領域番号 |
23K01161
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
水元 宏典 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80303999)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 倒産法の基礎理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、概要的には、従来、実務の指針となるべき学術的・理論的な研究が進んでいない領域である、倒産法における債権者ないし利害関係人の手続権について、研究代表者のこれまでの研究活動を踏まえつつ、比較法としては主にドイツ倒産法を参考として、その内容を検討・考察し、もって倒産法の基礎理論の構築に向けて第一歩を進めようとするものである。
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研究実績の概要 |
倒産法は、内容的には倒産実体法と倒産手続法から成るところ、本研究は、各論的には、倒産債権者への情報開示のあり方、および、債権者集会のあり方を考察し、総論的には、その考察と自身のこれまでの研究を踏まえて、倒産手続法について基礎理論の構築を目指すものであるが、究極的には、いわば車の両輪の一つである倒産実体法の基礎理論と統合することにより、倒産法全体の大理論を構築する作業とも位置づけられる。令和5年度は、その研究計画に従い、倒産債権者への情報開示のあり方を中心に、日本法とドイツ法の文献研究に取り組み、その成果の一つとして、朧気ながらではあるが、倒産手続法の基礎理論には「憲法適合性」の観念があるのではないか、との着想を得ることができた。他方で、私見によれば、倒産実体法の基礎理論には「市場適合性」の観念があるところ、倒産法全体の大理論を統合的に構築する上では、「憲法適合性」と「市場適合性」の整合性について解明の必要も生じた。そこで、「市場適合性」観念の彫たく錬磨にも取り組んだ。一般に基礎理論の彫たく錬磨は、各論との反省的均衡によって行われるため、倒産実体法のアポリアの一つである倒産法上の相殺権について、最近の注目すべき裁判例(大阪地裁令和4年11月24日判決)を検討した。その成果として、判例評釈(法セミ増刊・新判例解説Watch34号215頁)を公刊する機会を得たが、本研究との関係では、同裁判例の背景には、事業再生を物神化する思想があることがわかり、かかる思想は、倒産債務者財産の換価方法の選択において、一方では、市場による選択を歪めるという意味で、「市場適合性」に関係し、他方では、債権者の手続権を害するするという意味で、「憲法適合性」にも関係するのではないか、との暫定的な仮説を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、本研究の初年度として、応募申請書記載の研究計画に従い、まずは倒産債務者の情報開示義務について日本法とドイツ法の文献研究に取り組んだ。その過程で、倒産手続法の基礎理論について一定の着想を得られたのは大きな成果であった。他方で、予期せぬ新たな検討課題(「市場適合性」観念の錬磨と「憲法適合性」観念との統合)もみつかり、その検討にも取り組む必要が生じた。そのため、進捗状況は、「やや遅れている」と自己評価した。もっとも、新たな課題の検討の一端については、判例評釈の形で公表することができたので、悲観する必要はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方については、基本的には、応募申請書記載の研究計画に従うことになるが、初年度(令和5年度)における研究の過程で、予期せぬ新たに検討課題がみつかった。このため、次年度(令和6年度)以降は、その課題も併行して検討を行う必要があると考えている。 この新たな検討課題に対しては、すでに仮説を得ているので、総論と各論との反省的均衡による検証が有用と考えている。
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