研究課題/領域番号 |
23K01163
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
村上 裕 金沢大学, 法学系, 准教授 (80377374)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 取締役会 / 多様性 / ダイバーシティ / コーポレート・ガバナンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近年注目されている取締役会構成員の多様性(Diversity)について、クオータ制や情報開示規制といった多様性実現のための諸方策や、多様性の実効性確保の在り方、多様性確保と株主利益最大化原則との関係等について検討を行うことを目的とする。その際、日本と比して多様化が進んでいるアメリカにおける、取締役会の多様性の現状についても適宜参照しつつ、アメリカ法との比較法的考察を行い、もって日本法への示唆を得る。
|
研究実績の概要 |
本年度は、役員構成の多様化・ダイバーシティと株主利益最大化原則との関係について検討を行うため、アメリカ法における議論状況のサーベイを行った。アメリカにおいてもダイバーシティについては種々の議論がされているが、利益最大化に反する(あるいは効果が疑わしい)としてダイバーシティを否定する議論はあまり見受けられない。むしろ、ダイバーシティは何らかの形で株主利益最大化に貢献する(いわゆるビジネス・ケースとしてのダイバーシティ)、機関投資家等からのダイバーシティに向けた圧力を回避する意味でもダイバーシティを企業が積極的に進めることが企業の利益に資するといった議論がなされることが多いことが確認された。またダイバーシティの促進は、株主利益ではなく利害関係者利益を考慮するいわゆるステークホルダー主義への転換と捉えられる場合があるが、アメリカでは、株主利益第一主義を前提としつつ、取締役にダイバーシティを促進する義務が注意義務の一環として存在するとの主張、機関投資家について投資先企業のダイバーシティを促進する義務があるとの有力な主張も存在する。以上から、利益最大化を根拠にダイバーシティを否定する見解はアメリカにおいては成り立ち得ていないとの示唆を得た。もっとも、近年のアメリカにダイバーシティが推進される理由は、いわゆるBlack Lives Matter運動や#Mee Too運動の影響によるところが大きく、企業にとってダイバーシティが切迫した経営課題となっていたという実態があることも明らかとなった。このような運動がない我が国において、ダイバーシティをコーポレート・ガバナンスにどう位置付づけるかが別途問題となるが、この点は次年度以降(とりわけ最終年度)の研究課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年計画であり、最初の年にあたる2023年度では、役員構成の多様化・ダイバーシティと株主利益最大化原則との関係について検討を行うことを設定した。本年度の研究の結果、研究実績の概要に記載したとおり、利益最大化を根拠にダイバーシティを否定する見解はアメリカにおいては見受けられず、むしろ取締役等にダイバーシティにかかる義務を何らかの形で課すことで推進する見解が有力であるとの示唆を得た。当該成果について雑誌論文等への公表ができなかったが、2024年度中での公表を目指し鋭意執筆中である。このため、(2)計画どおりに進展しているとの結論に達した
|
今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる本年は、ダイバーシティの具体的実現方策について検討を行う。カリフォルニア州会社法のクオータ制以外の方策としてニューヨーク州やナスダックまたアメリカの連邦証券諸法による開示規制があるが、それ以外にどのような方策があり得るか、またそれらの問題点はあるかという点を中心に、文献調査及び検討を行う。具体的には、ナスダックによる開示については、アメリカでも賛否が分かれているところであり、またカリフォルニア州のクオータ制については、憲法上の問題から差止訴訟が提起されているが、これらの議論状況について検討する。また、アメリカにおいてダイバーシティに対する懈怠を理由として株主代表訴訟が提起されるケースが散見されることが判明している。このような訴訟が、ダイバーシティ推進にどのような役割を果たしうるのか、やはり裁判例の収集も含めて検討課題として、研究を進めていくことを予定している。
|