研究課題/領域番号 |
23K01169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 遺言 / 方式要件 / 方式緩和 / 民法 / 相続法 / 方式 |
研究開始時の研究の概要 |
遺言における厳格な方式主義と遺言の自由の保障の調整は、これまで、必要に応じて、裁判所の解釈を通じた方式要件の緩和によって個別事案レベルで図られてきた。しかし、現代社会においては、遺言をしようとする者に予測可能性と法的安定性を与えるように方式要件の解釈論の理論的整備をする必要があるとともに、社会状況や法技術の進展に適合するように、方式要件自体の設計を見直す必要が生じている。 本研究は、高齢化・国際化・高度科学技術化という現代社会の特徴的要素を背景に、方式主義と遺言の自由の保障のバランスを図る最適解として、方式要件がどのように解釈されるべきか、また、設計されるべきかを研究するものである。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、方式要件の解釈論に関する研究の準備的作業をおこなった。具体的には、第一に、わが国において方式違反を理由に遺言の効力が争われた裁判例を網羅的に収集し、その類型化を試みた。これらの作業を行った結果、形式的には方式違反にあたるが方式緩和によって遺言が無効とされなかった事案では、①複数の方式要件のうち一部の違反があっても、他の方式要件が履践されていることによって、全体として方式要件の目的(遺言者意思の真正性の確保)が達成されていると判断されたり、②遺言内容の客観的合理性が実質的に考慮されて、遺言者の最終意思の尊重という観点から、方式違反にもかかわらず「遺言者意思」の真正性が肯定されたりすることが確認された。①に関しては、一つの遺言方式において要求される複数の方式要件の目的および相互関係を、改めて立法時の議論や学説にも遡って検討する必要があると認識した。②に関しては、「方式要件を満たすもののみが遺言者意思として扱われる(方式要件を満たさずに表示された意思は遺言者意思とはいえない)」という方式主義の本来的思考が、実務では必ずしも採られていないことがうかがわれた。方式要件のもつ証拠保全機能は、今日ではその重要性を減じている可能性がある。 第二に、比較法研究のために、遺言の方式要件の緩和や解釈に関するドイツ法の裁判例や文献の収集作業をおこなった。この作業については、令和6年度も引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、わが国の方式緩和に関する裁判例と文献を収集し、裁判例の類型化を行うこと、および、裁判例をもとに解釈上の問題点を抽出することを予定していたところ、これらの作業について、おおむね遂行することができた。また、ドイツ法の文献収集についても、順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、引き続きドイツ法の裁判例と文献の収集とその分析・検討を進めつつ、これと並行して、英米、オーストラリアにおける遺言の方式要件とその緩和をめぐる裁判例および文献を収集する。英米、オーストラリア法の遺言方式については、わが国にないいわゆる認証遺言が重要な位置を占めているため、方式要件の構造・設計そのものについてはわが国の議論にそのまま参照することはできないが、方式緩和に関するルール、具体的には、英米の「harmless error rule」とオーストラリアの「substantial compliance doctrine」について、その醸成過程と内容を整理する。
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