研究課題/領域番号 |
23K01171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
杉本 好央 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 教授 (80347260)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 契約の終了 / 債務不履行 / やむを得ない事由 / 契約類型 / 雇用 / 請負 / 委任 / 寄託 / 労務 / 役務 |
研究開始時の研究の概要 |
労務を目的とする契約解消の正当性を判断するとき、依拠すべき基準は、民法では、契約総則のみならず、各契約類型に割り付けられている。法実践においては、これらの判断基準の適用関係を決定する解釈論の構築が必要となる。本研究では、ドイツ及びフランスにおける法展開を素材にして、契約解消の場面において契約類型の論理が作用する強度や範囲又は対抗論理等について検討を加え、契約解消の正当性判断に求められる事柄と、契約類型上の相違に由来する事柄とを腑分けし、それらの交錯関係を見定める理論的視座を獲得する。
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研究実績の概要 |
労務を目的とする契約が民法の定める契約類型に該当しないとき、契約解消の正当性判断には、①当該契約を民法656条の準委任と捉えて651条1項に依拠する方法と、②契約類型指標の観点から当該契約の性質又は特徴を分析し、雇用を対象とする628条、請負を対象とする641条のような契約各則の諸規定に依拠する方法がある。しかし、両者ともに、契約解消の正当性を適切に判断するにあたっては未決の問題が残る。本研究は、この問題を生み出す原因に視線を向けて、契約解消の正当性判断において契約類型の論理が作用する強度や範囲又は対抗論理等に検討を加え、契約解消の正当性判断に求められる事柄と、契約類型上の相違に由来する事柄とを腑分けし、それらの交錯関係を見定める理論的視座の獲得を目的とする。 研究期間1年目には、大別して2つの領域に取り組んだ。第一に、すでに着手しているドイツ法に関する研究を進めた。労務を目的とする契約について受け皿となる契約類型は、ドイツ民法では雇用である。そこで、雇用契約の解消を定めるドイツ民法626条をめぐる議論状況について、引き続き検討を加えた。 第二に、契約解消の正当性判断において契約類型の論理が作用する強度や範囲の検討においては、本研究の目的からすれば、受け皿として機能する契約類型が中心とならざるを得ない。しかし、検討の素材はそれに限られない。そこで、契約類型として長い歴史を有し、労務を目的とする契約に分類することのできる寄託契約を素材として取り上げて、ドイツ法及びフランス法における議論状況について検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
取組中の2つの研究領域について、以下のような進捗状況にある。 第一に、ドイツ民法626条に関する検討は、計画当初の想定をこえて遅れている。検討対象との関係でその原因を述べれば、第一に雇用契約の歴史的展開を踏まえた実相の把握には、資料の正確な読み取りと先行研究の適切な評価が相当程度必要であること、第二に民法典起草過程の把握には、複雑な背景をもつ委任契約との相互関係を踏まえた検討を要すること、である。 第二に、寄託契約の終了に関する検討について言えば、ドイツ法及びフランス法の状況について調査したところ、次のようなことが確認できた。すなわち、契約解消の正当性判断において、フランス法では、当該契約の性質決定を寄託から使用貸借へと改めて問題を解決するのに対して、ドイツ法では、継続的債権債務関係の規定を適用することで問題を解決していること、図式的に言えば、契約終了の正当化について、契約類型をヨコに移動する思考とタテに移動する思考が見られること、である。
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今後の研究の推進方策 |
取組中の2つの研究領域について、以下のように検討を進める。 第一に、ドイツ民法626条に関する検討は、先の進捗状況において述べたように遅れている。挽回のため、今後の研究では、雇用契約の実相把握に注力することにしたい。委任契約との関係では、原因なく契約を終了できる権利を定めるドイツ民法627条を取り上げて検討を加える必要があるが、これはさしあたり先延ばしにする。 第二に、寄託契約の終了に関する検討について引き続きこれを進めて、可能であれば、今年度中の成果の公表を目指したい。
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