研究課題/領域番号 |
23K01183
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石川 真衣 東北大学, 法学研究科, 准教授 (00734740)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 組合 / 社団 / ソシエテ / 株主権 / 株式会社 / 環境責任 / 社会 / 株主 / フランス法 / 公開会社 / 組合法理 / フランス会社法 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国では、組合法理は少人数・小規模な団体の法理と受け止められてきた。しかし、フランス法上、組合法理は、規模にかかわらず、すべての会社を対象とする民法典の組合の一般規定の基礎にある。本研究は、人的つながりの強い組合を前提とした法理や規定を大規模公開会社に用いることができることが現代企業社会においてどのような意味を持つのか、そしてフランス型株式会社モデルがどのようなものなのかを明らかにすることを目指すものである。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、わが国では少人数・小規模の団体の法理と受け止められてきた組合法理が、フランスにおいては、その規模にかかわらず、すべての会社を対象とする民法典の法律規定の基礎にあることを歴史・判例・理論・最新の改正という複数の側面から示す総括的な作業を行った。その理由は、株式会社の基礎となる会社(ソシエテ)概念の理解が、現代企業社会におけるフランス型株式会社モデルを明らかにするにあたり必要となると考えたためである。この際、2019年に成立したPACTE法が1978年のフランス民法典の大改正に次ぐと思われる形でソシエテ一般に関する基本規定を改正したことに注目した。具体的には、改正対象となった民法典1833条に関する検討を過去に行った分析を基礎に改めて行い、改正の意義とフランス国内における受け止めを示すための作業を行った。 この作業を通じて、ソシエテが営利団体の普遍的基礎であることを示し、これまで研究代表者が取り組んできたフランス会社法研究と結びつけた。 2019年PACTE法による民法典のソシエテに関する一般規定の見直しにより、ソシエテに社会・環境に関する課題の考慮が課されるようになった。このことが示すように、ソシエテに実現が託される価値の幅は近年広がっている。このような動きは株式会社に関する個別の制度においてもすでに顕著な形で感じ取られることを確認できたため、その影響が理論面を超えてどこまで具体的な制度設計に及んでいるのかを検討することを次の課題としている。また、株主概念をいかに捉えるかという問題と密接に関係する、2019年PACTE法による改正を通じて見直された株主情報の開示のための制度についての検討も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響で長らく実施することができていなかったフランス現地調査を以前と同様の形で行い、現地でのヒアリング及び現地での資料収集を行うことができたことは研究の進展に大きく貢献した(2023年度の現地調査は、2024年3月に実施した)。また、契約データベース(LaBase Lextenso)を通じてタイムリーに必要な情報・判例評釈を入手することができたことも助けとなった。その結果として、2023年度中にソシエテ概念に関する研究をまとめることができた。このことは、今後の検討を進めるうえで重要なステップとなると考えている。 2023年度は1978年のフランス民法典改正の検討に予定より早く取り組むことができ、その内容の一部を公表することができた。1978年のフランス民法典の改正(1978年1月4日の法律)は1804年からほぼ変わらぬ形で維持されてきたソシエテに関する一般規定を見直したものであり、当時大きく注目されたものである。しかし、内容面においては必ずしもソシエテ概念を完全に見直したものではなく、むしろ、従来の規定・構造を維持しつつ、現代化に合わせた調整がなされたという見方が適切と考えられる。このような分析を行うことはできたものの、同改正については、改正の背景を含めたより詳細な検討が必要であることが作業を進めるなかで明らかとなった。このため、引き続き検討対象としていくこととしている。 また、わが国の会社をめぐる用語の使用法・確立についての検討は行うことができておらず、現在のところ、他の邦語文献によるところが大きい。この点は2023年度中は十分に対応することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、わが国の会社をめぐる用語の確立について明治期の外国法継受のプロセスに着目した検討を行い、フランスとわが国の概念の共通点・相違点を明らかにすることに取り組む。なぜ特定の訳し方がわが国で定着したかという外国法の継受プロセスに着目することを計画している。そのうえで、2023年度に扱った総論的な問題が会社法の各論的問題にいかに影響したかについての検討を行う。 2024年度は、株式会社法制において、組合法理及びそれに基づく規定の適用対象から外れる部分を明らかにし、それが組合法理との関係でどのように説明されるのかを示す検討を行う予定である。また、実務家のヒアリングを行うために、2024年度末に現地調査を計画している。
|