研究課題/領域番号 |
23K01188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
金岡 京子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70377076)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | EU製造物責任指令 / 無人自動運転 / AIの民事責任 / 製造物責任 / 責任保険 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、無人自動運転を安全に実施するための4つの特性(①製造者、実施事業者、データ提供者、通信事業者、自治体、保険者等の協力体制、②安全かつ確実なデータの送受信、③システムのアップデートトセキュリティ、④迅速は事故原因究明と被害者救済)を踏まえ、車両引渡し後の製造者の運行への継続的関与、製造者によるバックエンドでの車両の人工知能操作に伴う危険の特性、事故原因究明のための製造者と保険者の協力の必要性増大について、ドイツ法との比較法研究を行うことによって、無人自動運転特有の新たな動的製造物責任制度および対応する新たな無人自動運転責任保険制度を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、2022年9月28日に欧州委員会が公表したEU製造物責任指令改正案のうち、特に無人自動運転車両製造者の民事責任の拡大に影響が及ぶと考えられる改正指令の趣旨、内容、保険制度への影響について集中的に研究した。研究手法は、ドイツ語版によるEU製造物責任指令の分析、その分析を踏まえたドイツの最新の学説の調査、および日本法への示唆となる観点の探求である。 本研究においては、無人自動運転の製造者責任に関係する改正案として、ソフトウェア、デジタルデータ、製造物に関係するデジタル役務、製造者のコントロール下で行われるソフトウェアのアップデート、アップグレード、セキュリティ対策も製造物責任の対象となること、製造物の欠陥、欠陥と損害との因果関係の推定規定等、デジタル時代の消費者保護を強化する趣旨の改正案を研究するとともに、ドイツの学説における上記改正案の位置づけと評価を調査した。本調査の結果、ドイツにおいては、動産でないソフトウェアそれ自体が製造物責任の対象となり得るかという学説上の議論は収束し、デジタルサービスまで製造物責任を拡張した改正案は、製造物責任をデジタル化された時代に適合されるために必要不可欠であるという評価が学説上有力な見解となっていることが明らかになった。 上記の研究成果を踏まえ、日本法への示唆について検討をしたところ、一番の課題は、自動車保険制度の枠組みで安定的に保障されている被害者救済の仕組みと同等の補償制度を製造物責任においても、実現できるか否かという問題であることが明らかになった。次年度以降、この課題解決のための研究を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、ドイツ法との比較法的手法により、無人自動運転の製造者責任の拡大の契機となるEU製造物責任指令改正案の分析、EU製造物責任指令改正案が無人自動運転の製造者責任拡大に及ぼす影響についての有力なドイツ学説の調査、および被害者救済のために製造物責任保険の在り方に係る課題解決が必要であることを明らかにすることができた。 本研究は、損害保険研究において、論文の形で公表することができ、本研究テーマに関心がある研究者の研究、保険実務家の実務の推進に寄与することが可能になったと考える。 したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、前年度の研究成果によって明らかになった課題を踏まえ、自動車保険の枠組みではなく、製造者責任保険の枠組みで被害者救済を検討する場合の課題、自動車保険者からの求償の問題点、AI特有の民事責任について、ドイツとの比較法的研究手法に基づき推進する。 また、実効性がある被害者救済の仕組みとなる製造者責任保険を検討するにあたって、自動運転システム(AI)の欠陥に係る立証責任の緩和、転換等についてのEU指令の改正、AI指令の新設動向、その他AI規制まで射程範囲を広げ、ドイツの最新の学説等を調査する計画である。
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