研究課題/領域番号 |
23K01191
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡部 美由紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40271853)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | デュープロセス / 仲裁判断の取消し / 仲裁廷の手続裁量 / 仲裁 / 手続保障 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国際仲裁におけるdue process paranoia(適正手続パラノイア)論を素材として、仲裁における手続保障のあり方を検討するものである。当事者の仲裁合意を基礎とする仲裁は、訴訟と異なる手続構造を有する一方、仲裁判断は確定判決と同一の効力を有する。しかしその前提として、仲裁に訴訟と同様の手続保障が要求されるか否かは明らかではない。実務では適正手続パラノイアにより仲裁廷が手続裁量権の行使を躊躇する結果、審理の長期化・費用の高騰化が生じ、当事者の不満が生じることが指摘されている。本研究では、この問題を解決すべく、先行研究や判例の分析から仲裁における手続保障のあり方について検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は、due process paranoia(適正手続パラノイア)に関する国内外の文献を収集し、とくに国際商事仲裁モデル法のコンメンタール、国際仲裁におけるdue process、国際商事仲裁における(仲裁廷の)裁量を制約するものとしてのdue process等に関する外国語文献を講読・分析したほか、国内の学説および裁判例について資料収集と分析を行った。これらの研究成果の一部については、2023年7月9日に明治大学で開催された第19回仲裁ADR法学会のシンポジウムにおいて、「仲裁におけるdue process-研究者の視点から」と題して報告した。このシンポジウムの内容については、学会誌『仲裁とADR』19号に掲載予定である。 報告では、仲裁におけるdue processについてマグナカルタに遡るdue processの沿革から検討し、仲裁におけるdue processの内容を特定の法規範に従って明確に規定することは困難であることを示した上で、due process paranoiaについて示唆的な方向性を示したシンガポールの判決、わが国の裁判例(東京高決平成30・8・1)等を紹介し、当事者の合意を基礎とし、仲裁廷の裁量が大きい仲裁においては、仲裁におけるdue processは、個別の手続の文脈に従って決定されるべきものであり、仲裁判断取消審や仲裁判断の承認・執行にあたって、裁判所は基本的に仲裁廷の判断を尊重すべきであるという視点を提供した。due process paranoiaは、手続保障に関する仲裁廷と裁判所の理解が異なりうることを前提としており、これを解消するためには、仲裁判断の事後的な審査における裁判所のあり方について仲裁廷と裁判所の認識を共通にすることが不可欠であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画の概要は、①適正手続パラノイアをめぐる問題の現状分析、②この問題に関する外国の先行研究の分析・検討、③仲裁判断取消事由の解釈論の検討、④仲裁手続の特質等からアプローチし、民事訴訟手続との比較・分析等を踏まえ、仲裁手続における手続保障のあり方について、一定の私見を提示することであり、初年度は、上記①~④につき、本申請課題に係る国内外の裁判例および国内外の論文・書籍等の文献資料を収集し、その分析を行い、可能であれば、仲裁実務家と積極的に意見交換を行うことを予定していた。 本年度は、資料収集が順調にすすみ、また、前記仲裁ADR学会報告の準備のために集中して文献の分析・検討を行うことができたほか、その関係で仲裁実務家や仲裁機関の関係者を含む多数の実務家や研究者と意見交換をすることができたため、当初の予定以上に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に引き続き、本研究課題に係る国内外の裁判例・文献資料の収集・分析・検討を行う。また、資料等の分析で得られた知識を基礎として、仲裁実務家等に積極的にヒアリングを行い、そこで得られた情報や問題意識に則して、研究の方向性を再度検討する。また、民事訴訟法の研究会等で中間報告を行い、研究者・実務家からの批判を仰ぎ、実務においても実効的な理論の構築に努める。 本年度の外国語文献は英米のものが中心であったため、次年度はとくにドイツ法についての研究をすすめたい。
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