研究課題/領域番号 |
23K01193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 智見 大阪大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20707509)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | デジタル資産 / 相続 / 死者の個人情報 / 死後事務委任 |
研究開始時の研究の概要 |
デジタルデータや(SNSなどの)デジタルアカウント、暗号資産、NFTなどの「デジタル資産」は、死後、法的にどのように取り扱われるのか(ex. 相続されるのか)、事前にその取扱いを決めておくことができるのか(ex. 友人に管理を委託することができるのか)。その解決は必ずしも明らかではない。本研究は、これらの問題にまつわる利害状況を整理し、相続法などこれまでの法学理論を踏まえた検討や、諸外国の動向との比較を通じて、日本法上一定の解釈論や立法論を提示することを目指す。
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研究実績の概要 |
第一に、「NFTの私法上の性質とNFT取引の法律関係」千葉惠美子編著『デジタル化社会の進展と法のデザイン』(商事法務、2023年)563-584頁を公表した。本稿は、直接には、NFTの私法上の性質を分析したうえで、その発行や取引をめぐる法律関係の規律について検討するものである。しかし、本研究課題であるデジタル資産の相続について論じるにおいて、その法的性質を論じることは避けられず、本稿はその一端を担うものといえる。その中では、NFTの私法上の性質を論じるにあたり、本研究課題である相続の観点からも分析を加え、NFTを債権や契約上の地位ではなく、物権あるいは物権的権利として位置づけるべきであると結論づけた。以上の考察を前提に、本稿では、NFTの発行や取引において生じる法律関係について一つの解釈論を提示しており、これは、未だ確定した解釈論のないこの問題を考えるにあたり、一定の意義を有するものということができる。 第二に、「死者の個人情報の保護」の問題を検討し、2023年11月には、総務省情報通信法学研究会通信法分科会にて研究報告を行った。現行の個人情報保護法では、個人情報は「生存する個人に関する情報」に限定されており、死者の個人情報はそれ自体としては保護されていない。しかし、SNSをはじめとして、個人が死後に残す個人情報は爆発的に増加しており、それに対する人格的利益を保護するかどうかを検討することは急務といえる。また、この問題は、デジタルアカウントの相続法上の地位を明らかにするにあたっての前提問題となる。本報告は、日本の裁判例及び条例による解決の試みを検証し、かつ、名誉毀損や著作者人格権という周辺領域に関する理論的分析を再検討することで、この問題を考察した。さらなる検討を要するものの、重要な問題提起をなしえたものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、2023年度において、①SNSアカウントの人格的価値を検討し、特に死後事務委任について分析すること、及び、②NFTの私法上の性質及びNFT取引の法律関係に検討するものとしていた。 第一に、①SNSアカウントの人格的価値については、死後事務委任に関する研究成果を公表するには至らなかった。しかし、これは、死後事務委任の検討する前に、死者の個人情報の保護についてどのように考えるべきかを確定すべきであると考えたためである。したがって、検討すべき課題を析出し、それについて一定の成果を公表できた点で、研究課題の順調な進展の一部であるということができる。 第二に、②NFTの私法上の性質及びNFT取引の法律関係については、論文の公表に至っており、研究課題が順調に進展しているといえる。 以上より、本研究課題は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、引き続き、①デジタルアカウントの人格的価値、及び、②暗号資産の相続法上の地位について検討を加える予定である。 第一に、①デジタルアカウントの人格的価値については、死者の個人情報の保護の検討を継続し、論文として成果を公表する。その際には、比較法の知見、特に近年改正のなされたフランス法の分析を取り入れたい。さらに、当初予定していた死後事務委任に関する研究も再開し、フランス法やドイツ法との比較を通じて、一定の成果を公表する。 第二に、②暗号資産の相続法上の地位については、その理論的な分析を通じて、一定の成果を得たい。暗号資産の私法上の規律については、近時、国際的な取決めがいくつか公表されているところであり、それらを分析することが研究の中心となる。
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