研究課題/領域番号 |
23K01200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 消費者脆弱性 / 標準化 / 規格 / ISO22458 / consumer vulnerability / ソフトロー / デジタル脆弱性 / 契約法の基本思想 / 努力義務 / 自主規制 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、脆弱性を有しながらも契約の当事者として市場社会に関わり続けられることを実質的に確保できるような法環境の整備を目的とし、その手段として消費者法制を捉えている。 本研究は、直接的に事業者の態様を義務づけることが時期尚早とみえる現状にあっても、今後の社会変化・意識変化に期待して、自主規制の有用性に着目する点を特徴としている。 脆弱性を有しながらも契約の当事者であり続けられるために具体的に何が必要であるかについて、実践的な示唆を与えてくれるのがISO22458であることから、本研究は本規格を分析・検証の基軸とする。 研究で得た知見を国内法の発展に活かすとともに、日本の知見を国外にも発信する。
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研究実績の概要 |
「消費者脆弱性の制御と消費者法制における努力義務の推進―国際規格ISO22458の観点から」と題する本研究課題の遂行にあたって、初年度である2023年度は、翌2024年度に実施予定の半年間にわたる在外での国際共同研究の素地を作るべく、共同研究者や、関係諸機関との連携に力を注いだ。 その過程において、①国際消費法学会での報告に加えて、②国際シンポジウムでのコメント、③国内における専門職(例 消費者問題相談委員、弁護士)向けの講演や研修、④公的諸機関への知識提供(例 消費者庁、日本規格協会)、⑤審議会(例 経済産業省、日本産業標準調査会)への参加、⑥日本規格の策定に関する知識提供(例 エステサービス提供業務に関するJIS化)を行うなど、比較法学的研究の実施のみならず、その成果を、随時、国内に還元することに努めた。 さらに、国内の消費者法改正の動きに呼応して、中でも、サービス契約をめぐる適正化への道筋をつくるべく、ソフトローとしての標準化・規格の法的・社会的意義を強調し、その基本原理を示しうる国際規格として、専門家(例 弁護士、消費者問題相談員)と協力しながら、ISO22458の国内普及に努めた。 また、EU法の動きにも目を向けた。ただし、EU加盟国においては、デジタル社会に対応するための「デジタル脆弱性」に限定されたハードローの制定への関心度が高く、関係すると思われる研究者と意見交換を行ったものの、研究遂行者が有する「消費者脆弱性」をいかなる消費者もが潜在的に有する普遍的概念である捉える姿勢については、一定の理解を得るに留まり共感を得るまでには至らなかった。 これに対して、研究遂行者の20年間に亘る専門対象国であるイングランド及び英国を旧宗主国とするコモンウェルス各国においては、こうした見解については大いに賛同を得ることができ、翌年度の共同研究の素地の確立を実感できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消費者脆弱性の制御と解消を目指す国際規格ISO22458の国内での社会的浸透について、法曹関係者、消費者団体、官公庁と協力しながら、順調に進めてくることができた。2024年度は半年間の在外研究を予定しており、さらなる展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度中に周到に準備した計画を実行する。すなわち、第一に、2024年4月から7月中旬までは、ウィーン大学に拠点を置き、EUにおけるデジタル取引やデジタルプラットフォーム、AI技術の導入をめぐる規制の必要性について共同研究を実施する。 第二に、7月下旬から9月下旬にかけては、オックスフォード大学に拠点を置き、EU法とは一線を画する、EU離脱後の英国独自の改革路線に着目した研究を遂行する。 いずれの時期においても、2023年度にオックスフォード大学及びケンブリッジ大学で構築した共同研究ネットワークを活かし、ウィーン滞在期間中にあっても、オンラインを利用して、積極的に共同研究を継続する。 また、特に、イギリス法の研究については、研究代表者の20年間に亘る持続的研究対象であることから、EUにおけるデジタル脆弱性をめぐる法改革との比較にとどまらず、デジタル財産への侵害など、不法行為法についても研究領域を広げたいと考えている。 さらには、契約法の背後にある法思想・法哲学について執筆する依頼を受けていることから、実定法の手法にとどまらず、オックスフォード大学及びケンブリッジ大学において伝統的厚みのあるJurisprudenceの手法も取り入れ、研究をさらに深化させていきたいと考えている。本研究との関係では、特に、契約法と市場形成との関係性について、Jurisprudenceなどの基本法学の手法からもたらされる成果は大きいことが期待できる。 以上の学問的成果については、随時、国内の実務家や企業関係者たちにも情報発信していきたいと考えている。2024年度も昨年度と同様、審議会委員や法曹関係者、民間企業従事者との交流を通して、日本社会に適用しうる学問的理論の探求を心掛けたい。
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