研究課題/領域番号 |
23K01202
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
出口 哲也 立正大学, 法学部, 教授 (60597871)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 取締役 / 利益相反 / 忠実義務 / フランス法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非公開会社において取締役が株主の利益を侵害しつつ自己の利益を図るような取引をいかに制御すべきか、フランスにおける議論を参考に、検討する。 フランスでは、判例上、取締役を含む会社指揮者の社員に対する忠実義務の存在が指摘され、非上場会社の指揮者・社員間での株式譲渡に際して、指揮者は社員に対して一定の情報提供義務を負うものとされている。本研究では、かかる判例および学説の生成・展開から、わが国における議論に示唆を得ることを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、非公開会社における取締役と株主との間の利益相反取引において取締役が何らかの特別な義務を負うべきであるか否かという点についての理論的検証を行い、非公開会社の株主保護についての議論に新たな視座をもたらすことである。 このような目的を達成するために、本研究ではフランスにおける判例および学説を比較対象としてとりあげ、文献の調査・検討を中心に、3か年の研究期間を三段階に分けて研究を進めている。2023年度は、その第一段階として、フランスにおける取締役の社員に対する忠実義務(誠実義務)に関する判例の展開を調査・研究した。具体的には、2018年7月10日に破毀院商事部により示された判決をとりあげ、検討した。1996年、フランスでは取締役と株主との間の取引に関する事件において、取締役の社員に対する忠実義務の存在が破毀院により認められた。それ以来、さまざまな判例によって同義務は拡大・強化されてきたが、2016年にこの傾向に歯止めをかけることを示唆する判例も現れている。このように、同義務をめぐる判例の傾向が変化しつつある中で、2023年度中に実施した研究では、上記2018年判決により、破毀院が同義務の拡大・強化傾向に回帰したように解される立場を示したことを明らかにすることができた。 わが国と同様に、フランスも取締役の社員に対する忠実義務を法定していない。一方で、フランスは、わが国と異なり、判例により同義務の存在および内容を確立してきている。2023年度中に実施した研究においてその一部を確認することができた。もっとも、上述のとおり、同国における取締役の社員に対する忠実義務に関する判例・学説等はなお進展中にあるように思われる。引き続き同国における関連判例および学説を研究し、わが国における議論への示唆を得ることを試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題に関連する判例の検討が遅れている。 当初の研究計画では、2023年度中にフランスにおける判例の展開を整理し、議論の基礎を確立することを予定していた。しかしながら、想定していたものよりも複雑でかつ多くの関連判例があることがわかり、その整理・検討に時間を要している。 また、検討を進める中で、フランス民法典1112条以下に定められている「交渉」に関する規定をめぐる立法および学説の状況を精査することが必要であることを認識した。この点についても、必要な文献を収集・検討しており、想定よりもやや進捗が遅れている。 もっとも、本研究課題は文献研究を中心としているところ、必要な文献を調査・収集する点においては、滞りなく行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、フランスにおける取締役の忠実義務に関する判例・学説およびフランス民法典所定の「交渉」に関する規定の議論状況について、文献研究を中心に検討を進め、研究計画の第一段階を着実に遂行する。現地での調査研究については、それを実のあるものとするに足るだけの十分な進捗が確認できたのちに実行する。
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