研究課題/領域番号 |
23K01212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原田 綾子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00547630)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 子どもの意見表明権 / 弁護士 / 子ども / 権利 |
研究開始時の研究の概要 |
日本が国連子どもの権利条約を批准した1994年以来、子どもたちは様々な権利を享受してきたはずであるが、現実には子どもたちの大多数は権利を保障するはずの法システムにつながることができずにいる。日本の子どもたちは「正義へのアクセス」が阻害されている状態に恒常的に置かれてきたのである。本研究は、このような問題意識ののもとで、日本や海外における子どものための「正義へのアクセス」の現状、子どものための「正義へのアクセス」の理論的基盤、そして子どものための「正義へのアクセス」の拡充を図っていく際の課題を明らかにすることを目指すものである。
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研究実績の概要 |
本年度は、単著『子どもの意見表明権の保障――家事司法システムにおける子どもの権利』を出版した。子どもに関わる家事紛争の実効的な解決のためには、子どもの思いや気持ちを大切にしながらその実効化を図る必要があり、その視点から家事司法システムの課題を論じた。本書により、第35回尾中郁夫・家族法学術奨励賞を受賞した。 本書の内容に関連していくつかの講演や学会発表を行った。子どもの意見表明を保障するためには子ども自身が弁護士などの法的支援者にアクセスすることが重要であり、未成年者による民事法律扶助の利用を促進する必要性などについて論じた。また、国際家族法学会に参加し、弁護士による子どもの意見表明権の保障についての実務について論じた。 さらに「子どもと法――法と社会の視点から見る児童虐待への対応」と題する論文を執筆し、特に児童虐待への対応において子どもの権利保障や手続参加が重要な課題となることを論じた。また本年は、子どもの監護・面会交流の決定と実施を支える法的・社会的な仕組みについてのアメリカでのフィールドワークの成果を、論文として公表した(原田綾子「DV保護命令と子の監護」。また「カリフォルニア州における子どもの監護の決定プロセス」と題する論文を執筆し、すでに脱稿済み)。他にも、Historical Development of Japanese Family Law and Family Policyと題する英語の論文を執筆し公刊した。 そのほか、いくつかの研究会報告と学会での報告を行った。日本法社会学会では「コロナ禍と家族――法と社会の観点から」と題する報告を行った。コロナ禍において子どもの孤立が進んだりまた面会交流紛争が発生したことなどを踏まえて、今後の家族法システムに求められる対応について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子どものための「正義へのアクセス」を考える際に、弁護士へのアクセスは重要な課題である。単著「子どもの意見表明権の保障」において、弁護士が子どもの権利の保障に重要な役割を果たしていることを明らかにしたことで、弁護士へのアクセスの保障というテーマをより説得的に論じることができるようになった。また、研究成果のアウトプットも、単著、論文、学会報告、シンポジウム登壇など、バランスよく行っており、着実に成果を公表できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今のところ、家事司法領域における子どもの弁護士アクセスに焦点を当てており、領域を絞ることで着実に成果が得られている面があるが、今後は他の領域に焦点を当てて、そこでの子どもの権利保障について研究を進めていきたいと考えている。次年度はさしあたり、児童福祉領域における子どもの権利保障、正義へのアクセスについて調査研究を行い、一定の成果を挙げられるように進めていく予定である。子どもの権利保障については、具体的な領域における固有の制度的文脈を十分に理解したうえで、実効性のある制度の提案をしていく必要があるので、実務の状況については、フィールドワークや実務家のインタビューなどを通して、丁寧に把握するように努めたい。来年度以降は、海外での実情調査も行っていく予定である。
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