研究課題/領域番号 |
23K01239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
三船 毅 中央大学, 経済学部, 教授 (00308800)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 棄権 / 行為の線型モデル / 選挙の空間理論 / 政党間競争 / 空間理論 / 選挙 / 有権者 |
研究開始時の研究の概要 |
棄権という有権者の行動が選挙過程,政党間競争にいかなる影響を及ぼ すのかについては,理論的にも実証的にもほとんど研究されていないのが現状である.したがっ て,棄権が民主主義にいかなる危機をもたらすのかについては,我々は想像の域を出ていないの である.この「棄権が民主主義にいかなる危機をもたらすのか」が,本研究の「問い」である.本 研究は「棄権と政党間競争・選挙過程」に関して実証研究よりも,先ず基礎的な理論研究をとお して,幾つかのフォーマルモデルにより棄権がもたらす民主主義の危機を提示する.
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研究実績の概要 |
2023年度は,棄権の増加が政党間競争に如何なる影響を及ぼすのかについて,フォーマルモデルから考察を行った. 棄権者が増えようが減ろうが,残りの票を巡り政党間競争は繰り広げられるから,棄権と政党間競争は無関係のようにみえる.しかし,本当にそうなのかと考えさせられる状況も存在している.21世紀になり,日本の国政選挙では民主党が一度は政権を担ったものの,第2次安倍内閣以降は自民党1強が続いている.この間に,投票率は短期的には変動をみせるが,長期的なトレンドとしては低水準での推移もしくは低下傾向をみせていると考えられる.棄権が増加していく背景には,政党に対する有権者の評価が存在する.失政を犯した政党が得票を減らし,他党の得票が増えるのが通常であろうが,無差別や疎外により政策選好の効用が低い有権者が棄権することになる.よって,棄権が増加するときには,失政を犯した政党が得票を多く減らす場合が多いと考えられる.本稿では,棄権が増加する状況を理論的に検討するために,主に二政党が同じ割合で有権者から利害関心を失い得票を減らす状況と異なる割合で得票を晴らす状況を想定して,棄権の増加が政党間競争に及ぼす影響を検証した.複数の政党が異なる割合で得票を減らす場合は,当然ながら減少する割合の多い政党の勢力が低下いていく.しかし,政党が同じ割合で得票を減らす状況では,政党の動員能力に差があると初期時点で優位にある第一党の勢力が拡大する.もし,勢力比が変化しない状況を均衡とするならば,2つの政党に対する利害関心の比と,有権者の投票に対する制御能力の比が同じ場合が均衡となる.よって,棄権が増加していく状況では,制御能力の比が利害関心の比よりも小さい場合に初期時点に優位にある政党は勢力を拡大させる.逆に,制御能力の比が利害関心の比よりも大きい場合ならば,初期時点で優位である政党でも勢力を縮小させるのである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に推移していると考えられる.しかし,2023年度は申請者が大学での事務処理負担が予想以上に大きかったために,当初の予想よりは進捗しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,棄権の2つの類型である「疎外」と「無差別」による発生メカニズムをコールマンの行為の線形システムによりモデル化して,理論的検討を行う.また,政党の政策と有権者の1票の交換レートが,投票と棄権の閾値としてどのように変化するのかを明らかにする.
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