研究課題/領域番号 |
23K01240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
加藤 恵美 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (60434213)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヘイトスピーチ / 市民運動 / 地域活動 / 在日コリアン / 地方自治 / 多文化共生 |
研究開始時の研究の概要 |
日本では、海外出身者に対するヘイトスピーチが2008年ごろから公然と始まった。「表現の自由」を守りながらヘイトスピーチにいかに対処するか、特にヘイトスピーチの刑事的規制は論争的である。それにもかかわらず神奈川県川崎市は、2019年12月に「ヘイトスピーチ禁止条例」を策定し、刑事的規制を始めた。それはなぜだろうか。 本研究は、この問いの答えを、3つの主要アクターであるA.市民運動団体、B.市議会議員、C.ヘイトスピーチの被害を受けた地区の日本人住民を対象とする聞き取り調査を通じて探究する。そうして反ヘイトスピーチの取り組みを地方自治という観点から捉え直す。
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研究実績の概要 |
本研究は、なぜ川崎市においてヘイトスピーチを「禁止」する条例が成立したのか、この問いの答えを、3つの主要アクターであるA.市民運動団体、B.市議会議員、C.ヘイトスピーチの被害を受けた地区の日本人住民を対象とする聞き取り調査を通じて探究し、反ヘイトスピーチの取り組みを地方自治という観点から捉え直すことを目指している。 2023年度は、Aの視点での調査を行った。ヘイトスピーチの「禁止」を川崎市に強く求めたのは市民運動団体の連帯組織「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク(市民ネットワーク)」であった。市民ネットワークの第1回目の集会は約300人の参加を得て2016年1月に開催された。それは川崎市南部の在日コリアン集住地区である桜本地区に向かったヘイトデモ(2回目)の侵入をカウンター行動で阻止した直後のことであった。この集会の時点で83団体がネットワークに賛同していた。また、同集会を通じてネットワークはさらに拡大した(同年2月時点で137団体)。 市民ネットワークの「呼びかけ人」は、①桜本地区で長年地域活動に取り組んできた社会福祉法人青丘社(在日大韓基督教会川崎教会が母体)、②川崎市と姉妹都市協定を結んでいる韓国・富川市との市民交流を担う「川崎・富川市民交流会」、③反差別カウンター行動を行う「クラック川崎」の三団体であった。①はキリスト教関係あるいは神奈川県内を拠点とする人権・平和団体、②は自治体労働者の労働組合や地域の政党・会派、③は(川崎にとどまらない)反ヘイトスピーチを目的とした諸団体を幅広く結びつけたと考えられる。また法曹関係者の協力・参加も目立つ。 本研究に関連して公開した成果としては、市民ネットワークの起源の1つである①について、1970年代の桜本地区を拠点とした市民運動・地域活動の創成についての学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の収集は順調に進み、聞き取り調査の対象になるキーパーソンの特定はほぼ完了し、その一部を対象とした聞き取り調査も実際に実施した。対象者の人権に配慮しつつ、研究成果の公開に積極的に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、上述のA. 市民運動団体の視点での調査を継続しつつ、B.市議会議員ないし川崎市行政関係者の視点で、ヘイトスピーチを「禁止」する条例の成立過程を跡付け考察する。ヘイトスピーチを「禁止」する条例は正式には「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」として、川崎市議会において自民党、公明党、立憲民主党、共産党などの全会一致で2019年12月に成立した。この条例の内容と策定の経緯を明らかにしていきたい。
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