本研究は、明治維新期の政治的社会的変革を「知識革命」として把握する視座を提唱し、その妥当性を論証することによって、明治国家の史的構造を問い直すものである。最近の思想史や政治史の研究を通じて、明治維新が決して江戸後期社会との歴史的断絶ではなく、むしろそれとの連続性のうえに成立したことに注意が向けられている。すなわち、明治維新後の日本社会が突然変異的に西洋の学芸や技術を受容したというのではなく、幕末からの知的活動の活性化と爛熟という前提があり、それに立脚して明治期の社会的再編成がなされたとの認識である。このような歴史像を実証化し理論化することを通じて、知識社会史と国制史の架橋を目指す。
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