研究課題/領域番号 |
23K01258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
大矢 温 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (20275465)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ロシア / 思想史 / 大国主義 / ナショナリズム / アイデンティティー / チュッチェフ / チェルヌィシェフスキー |
研究開始時の研究の概要 |
ウクライナ紛争のメカニズムに思想史の立場から光を当てることを目的とした研究である。ロシアの「大国主義」思想を19世紀以来のロシア・ナショナリズムの系譜の中に位置づけ、そこにウクライナ紛争の思想的背景を見ようとするものである。 そのために、まず第一段階として19世紀ロシアにおけるナショナル・アイデンティティーの系譜をたどり、初期のスラヴ思想からスラヴ派、さらにはクリミア戦争後にスラヴ派の中から展開した汎スラヴ主義の系譜を「大国主義」を軸に再構築する。 次にロシア革命後の亡命思想家によるユーラシア主義を19世紀ロシアの「大国主義」の延長線上に位置づけ、ソ連崩壊後の新ユーラシア主義へとつなげる。
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研究実績の概要 |
現在進行中のウクライナ戦争の背景となるロシア大国主義思想を19世紀ロシアのナショナリズムの歴史的系譜の中で位置づけるために、ロシア・ナショナリズムの発生から展開に至る過程の調査研究を行っている。ただし、当初予定していたロシアにおける資料調査及び研究会発表が諸般の事情でできなくなったため、研究会発表を遠隔に、資料調査をフィンランド国立図書館に変更している。 研究1年目の今年度はロシア・ナショナリズムの発生に関わる研究として、ロシア・ナショナリズムの初期の思想家としてフョードル・チュッチェフを対象に分析を進め、彼におけるロシア大国主義思想の背景、発生と展開の過程を解明することができた。その結果は、2024年3月発行の『札幌大学研究紀要』第6号に「Ф.И.チュッチェフにおけるロシア・ナショナリズム」というテーマで論文にまとめ、発表することができた。 クリミア戦争敗戦後のロシア大国主義の揺らぎと国際資本主義の渦中における危機感については、2023年10月25日にロシア、サラトフ市においてチェルヌィシェフスキー博物館の主催により開催された学術シンポジウムに遠隔で参加し、“Держабная Россия” в мировом капитализме(国際資本主義の中の「大国ロシア」)というテーマで発表を行った。 2年目以降の研究に備え、2024年3月11日から23日の日程で資料調査のためにフィンランド国立図書館に出張し、19世紀ロシアの新聞雑誌に関する資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシア大国主義思想の思潮の発生から展開に至る大まかな見取り図を描く作業に入ることができ、1年目の成果としてその発生期の代表的な思想家チュッチェフにおける大国主義思想の発生から展開の過程を解明することができた。 さらにスラヴ派およびその周辺のみならず、西欧派の代表的思想家と目されるチェルヌィシェフスキーにおいてもクリミア戦争敗戦後にナショナルな危機意識を見ることができることに気づき、国際資本主義の競争的環境における「大国ロシア」の危機に関する彼の思想を分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ロシア大国主義思想の思潮の発生から展開に至る過程を思想史的に位置づけるために、研究2年目はチュッチェフ、パゴーヂンといった初期の思想家からスラヴ派グループへの思想的継承、展開過程を解明し、さらに研究3年目にはスラヴ派グループからイヴァン・アクサーコフらの汎スラヴ主義への展開過程を解明する予定。
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