研究課題/領域番号 |
23K01269
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
山田 紀彦 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究グループ長 (50450523)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 権威主義体制 / ラオス / 村長選挙 / 選挙操作 / 正当性 / 選挙 / 独裁 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの独裁者(政党などの支配者集団を含む)は特定の人物の選出が目的にもかかわらず、競争的選挙を実施する。したがって目的を確実に達成するには選挙の操作が必要となる。しかし競争性や公平性を大きく歪めれば、選挙の信頼性や体制の正当性は低下する。先行研究では、選挙前に財の提供や利益供与を行い有権者の支持を動員することで、このジレンマを回避できることが実証されている。一方、経済的保有資源に乏しい場合、ジレンマは解消されないのだろうか。本研究はラオスの村長選挙を事例に、経済的資源が脆弱な独裁者が選挙や体制の正当性を低下させずに操作を行い、目的を達成しているメカニズムを明らかにし、理論的含意を導き出す。
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研究実績の概要 |
2023年度は本研究課題の初年度であったため、権威主義体制下の選挙および支配の正当化に関する先行研究の整理を行うとともに、ラオスの村長選挙に関する法規やこれまで欠損していた村レベルのデータを収集した。理論的整理については特に独裁者が選挙で直面するジレンマを解消するうえで、どのような選挙不正・操作を行うのか、また、どのような政治・経済的文脈で特定の手段を選択するのか、その2点に絞って作業を進めた。独裁者は選挙を通じて達成したい目的、選挙を実施するうえで自らがおかれた状況、政治・経済・行政などの保有資源、選挙操作に伴うコストとベネフィットなどを考慮しながら、操作の手段やその度合いを選択する。 先行研究の枠組みをラオスの事例に照らし合わせると、経済資源の動員やあからさまな不正は選択肢から外れることになる。なぜなら人民革命党は保有する経済的資源に余裕がなく、あからさまな不正は「民主的」選挙の正当性を低下させるからである。したがってラオスの場合は、選挙制度を通じた見えにくい操作が選択される。その一方で、そもそもが一党独裁体制であるため、選挙そのものが「民主的」であることを装う必要がある。独裁選挙の正当化という点については中国の村民委員会選挙に関する先行研究を重点的に収集し、整理した。ラオスの場合も複数候補者のなかから有権者が選択できるようにするとともに、有権者の意見が反映される制度であることをアピールする。 また、新たに収集したデータからは、これまで入手したデータと同様に、党の目的である党書記と村長の兼任が増加していることが確認できた。つまり党が全国の村々で選挙を操作し、選挙を通じて党書記を村長に就任させるという目的を徐々に達成していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する党や国家文書と村レベルのデータ収集、および先行研究の整理はほぼ予定どおりに進んでいる。とくにラオス内務省が保管する村長に関するデータはほぼすべて入手できた。理論・分析枠組みの構築も予定どおり進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も引き続き、権威主義体制の選挙制度や支配の正当化に関する研究をレビューし、理論の基礎を構築する。また、世界価値観調査やアジアンバロメータなど各種調査にも依拠し、選挙や体制に対する国民の意識についても分析を行う。ラオスは両調査の対象外であるが、中国やベトナム、またそのほかの権威主義体制国のデータを参考に、独裁者の正当化戦略がどの程度有効に機能しているのかを考察する。そのうえで、ラオス内務省地方行政局と協力しながらラオス国内においてどのような意識調査が実施可能かを探り、準備に着手する。
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