研究課題/領域番号 |
23K01297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 真吾 近畿大学, 法学部, 准教授 (10705883)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 日本外交史 / 日米関係 / 米軍基地 / 再軍備 / 自衛隊 / 日米安保条約 / 米国外交史 / 冷戦 / 同盟 |
研究開始時の研究の概要 |
なぜ、いかにして日米同盟は形成されたのか。なぜ、いかにして形成当初の日米同盟は一般的ではない「歪な形」になったのか。日米同盟には、在日米軍基地の存在のように形成時から現在まで本質的に一貫している要素が多いが、その形成には未解明の部分が残されている。本研究は、国内政治・外交戦略・軍事戦略の諸要素を明示的に融合した理論的な分析枠組みと、一次史料に基づく歴史叙述を組み合わせ、日米同盟の形成とその制度デザインの決定を分析する。本研究は、日本外交史研究だけではなく、冷戦史研究、同盟に関する理論研究、東アジアの安全保障に関する政策研究の発展にも貢献しうる。
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研究実績の概要 |
なぜ、いかにして日米同盟は形成されたのか。なぜ、いかにして形成当初の日米同盟は一般的ではない「歪な形」になったのか。日米同盟の形成とその制度デザインの決定を分析する本研究の初年度(2023年度)は、米国がなぜ日本を提携相手に選んだのか――言い換えると、米国が日本との提携に見いだした利益は何だったのか――という根本的な問いの解明を試みた。 2023年度の中心作業は、史料の収集、史料と先行研究の精査、論考の執筆だった。第一に、日本国内で、日米同盟の形成に関連する日米両国の史料を渉猟した。米国の史料に関しては、マイクロフィルム/マイクロフィッシュ化された文書およびオンライン上で利用可能な文書を調査し、国家安全保障会議(NSC)、国務省、中央情報局(CIA)、そして統合参謀本部(JCS)や陸軍省をはじめとする国防総省の重要文書を入手した。加えて、国立国会図書館憲政資料室や沖縄県公文書館がデジタル化して公開している極東軍の文書を丹念に調べた。日本の史料に関しては、外務省外交史料館が発行した外交文書集や、同史料館が所蔵している外交文書、憲政資料室に所蔵されている私文書の調査を行った。 第二に、史料と先行研究の精査をつうじて、日米同盟の形成に関する新発見や新解釈の余地があることを確認した。その一つが、上述の米国が日本との提携に見いだした利益という根本的問題である。加えて、米国の作戦計画において在日米軍基地がいかなる役割を与えられていたのかという、在日米軍基地の起源にかかわる問題が解明されていないことも明らかになった。さらに、1951年初頭から翌年夏にかけて米国政府が日本側関係者と協議しながら日本の海軍と空軍の再建・創設を検討・決定した経緯と要因が十分には明らかになっていないことが判明した。 第三に、米国が日本との提携に見いだした利益に関する論考の執筆を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、前年度までの研究プロジェクト(1980年代の米ソ核軍備管理交渉とG7サミットをめぐる日本外交)の最終成果を仕上げる作業が後ろ倒しとなって食い込んだため、本研究に割り当てられる時間と労力が大幅に減少してしまった。特に影響が大きかったのは米国での史料調査であり、当初予定していたワシントンDC近郊の国立公文書館2号館(National Archives, II)などでの調査が実施できなかった。 その一方で、日本国内での調査は順調に進み、多くの新史料を発掘できた。その結果、「研究業績の概要」で上述した新発見・新解釈の余地が明確になった。執筆を開始した、米国が日本との提携に見いだした利益に関する上記論考は、2024年度中の公刊が見込まれる。 日米同盟の形成とその制度デザインの決定を分析する本研究の具体的課題は、①在日米軍基地を維持するという米国の決定、②米国による日本再軍備の決定、③日本による独立後の安全保障構想、④再軍備・安保条約・行政協定に関する日米交渉・協議を分析することにある。米国が日本との提携に見いだした利益に関する上記論考は、これらの課題を直接明らかにするものではないが、これらすべての前提となるものである。当初、2023年度には、これに加え、①在日米軍基地あるいは④再軍備に関する日米協議についても論考の執筆を開始することを予定していたが、それには至らなかった(なお、②日本再軍備の決定と③日本の安全保障構想、④安保条約・行政協定に関する日米交渉については、既に論考を公刊している)。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降には、2023年度に実施できなかった米国の国立公文書館2号館での実地調査を行い、新史料の発見に努める。特に、統合参謀本部の文書のうち、在外基地や戦力展開、作戦計画など、日本国内では体系的に収集できない文書の調査に重点を置く。発見できる望みは必ずしも大きくないが、日本の海軍と空軍の再建・創設を主導した可能性のある極東海軍と極東空軍――当時日本に司令部を置いていた――の動向を明らかにするファイルも探索する。 加えて、その他の文書館・図書館での調査も実施する。具体的には、上記の極東海軍と極東空軍に関連する文書を調査する。極東海軍については、当時の司令官と参謀長の日記や私文書が、カリフォルニア州スタンフォードのフーバー研究所(Hoover Institution)、およびワシントンDCの海軍歴史・伝統司令部(Naval History and Heritage Command)に所蔵されていることが判明している。極東空軍については、おそらく内部の歴史家によって著された公式史や当時の司令官の私文書が、アラバマ州モンゴメリーの空軍歴史研究局(Air Force Historical Research Agency)に所蔵されていることが判明している。その他、ペンシルヴァニア州カーライルの陸軍戦史研究所(Army History Institute)に所蔵されている、当時の極東軍司令官の私文書や日本再軍備に関する公式史も活用したい。 これらの調査で得られる史料および既に入手済みの日米の史料に基づき、論考執筆も進める。米国が日本との提携に見いだした利益に関する上記論考を完成させるとともに、在日米軍基地あるいは日本再軍備に関する日米協議に関する論考の執筆を開始したい。
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