研究課題/領域番号 |
23K01302
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岸本 信 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00610560)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 情報財 / スター型のネットワーク / 結託耐性ナッシュ均衡 / 負の外部効果 / 転売 / 取引ネットワーク / ゲーム理論 |
研究開始時の研究の概要 |
デジタル化された音楽などのコンテンツや企業が収集する顧客の購買履歴などのデータは、費用をかけずに複製でき、複製しても元のコンテンツやデータを所有し続けられるという特徴を持ち、情報財と呼ばれる。このような情報財は第三者への転売が制限されていることが多いが、完全には転売を防ぐことはできない。そこで、本研究では、情報財の取引が可能な売り手と買い手との関係をネットワークを用いて表現し、ゲーム理論を応用して、様々な情報財の取引プロセスの下で、転売停止の可能性(情報財の転売が自然に停止するか否か)および拡散の度合い(情報財がどこまで拡散するのか)を分析する。
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研究実績の概要 |
本年度は、本研究課題のベンチマークとして情報財の転売ができない状況の分析を行った。情報財の転売ができない状況は、情報財の(一人の)売り手と全ての(潜在的な)買い手との間にリンクがあり、買い手の間にはリンクが全く存在しないスター型のネットワークとして表現ができる。その取引ネットワークの下で、売り手と全ての買い手が情報財の価格などを同時に提示する取引プロセスを非協力ゲームとしてモデル化し、結託耐性ナッシュ均衡を応用して分析を行った。情報財の価値に関する負の外部効果(情報財の所有者の増加に伴って情報財の価値が減少する状況)を仮定したとき、主に次の分析結果を得ることができた。結託耐性ナッシュ均衡を定義する際に必要となる「ある戦略の組からの逸脱」を「逸脱するプレイヤーたち全ての利得が改善するときに逸脱する」と定義する場合、結託耐性ナッシュ均衡が存在することが分かった。また、その結託耐性ナッシュ均衡の集合は、研究代表者が以前の研究で定義した協力ゲーム理論の解概念(拒否耐性を持つコア)と一致することも分かった。一方で、「逸脱するプレイヤーたち全ての利得が下がることなく、少なくとも一人の逸脱するプレイヤーの利得が改善するときに逸脱する」と逸脱の定義を変更した場合、結託耐性ナッシュ均衡が存在しなくなる可能性があることも分かった。 また、上記の分析と並行して、本研究課題に関する先行研究の調査および精読も行い、先行研究の整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、家庭の事情に加えて、想定していたよりも学内業務の負担が増えたため、本研究課題に充てる時間が当初の予定よりも減ってしまい、計画通りに研究を進めることができなかった。また、同様の理由により、予定していた研究会や学会などに対面で参加できなかったこともあり、参加者との情報交換および本研究課題に関する情報収集の機会が減ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、情報財の転売ができない状況しか分析ができなかったが、今後は、情報財の転売が可能な状況をモデル分析する予定である。具体的には、負の外部効果がある状況で、情報財の売り手と全ての買い手との間だけでなく、全ての買い手の間にもリンクがある完全ネットワークを取引ネットワークとして仮定する。そして、この取引ネットワークの下で様々な取引プロセスをモデル化・考察し、情報財の拡散の度合いなどを分析する予定である。 また、可能な限り、本研究課題に関連する研究会や学会などに参加し、本研究課題に関する情報交換および情報収集を行い、より効率的に研究を進める予定である。
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