| 研究課題/領域番号 |
23K01322
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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| 研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
川波 洋一 下関市立大学, 経済学研究科, 特別招聘教授 (80150390)
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| 研究分担者 |
前田 真一郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (00410770)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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| キーワード | 収益力 / 銀行業 / 資本 / キャッシュフロー / 貸付信用 / 資本化 / 金融市場 / 独占 / セキュリタイゼーション / 金融危機 / 金融バブル |
| 研究開始時の研究の概要 |
アメリカでは、大規模な金融バブル、セキュリタイゼーションの盛行や金融危機の頻発、巨大な資本市場の存在、大々的な企業買収・合併運動といった特異な現象が発生した。本研究では、アメリカを中心とする経済学者とりわけ金融論研究者の理論を学説史的な視点から考察する。その真意は、こうしたイノべーティブな動きを生み出す原動力が、金融の規制緩和やグローバル化、技術革新といった要因だけではなく、金融理論の革新にあったことを明らかにしたいということにある。そうすることによって初めて、アメリカを始め、資本主義国における金融システムの将来像が描けるはずである。
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| 研究実績の概要 |
信用理論研究学会のジャーナルであるJournal of Credit Theoryに論文を発表した。The Capitalization of Earning Capacity and T. Veblen’s Theory of Loan Creditにおいて、ヴェブレンにおける貸付信用論の核心が収益力の資本化とその事実上の担保化による企業資本の膨張にあることは改めて確認できた。この理論は、19世紀末から20世紀初めの企業買収合併運動や独占の形成の説明にとって有効であるだけでなく、信用恐慌の説明や企業資本の膨張、金融市場における詐欺的金融取引の説明にも援用可能であることが明らかになった。また、ヴェブレンの貸付信用論に関する学説史的サーベイを行うなかで同時代の経済学者だけでなく、イギリスの古典派経済学、19世紀末に誕生した新古典派経済学、アメリカにおける新古典派経済学、さらには1930年代以降のケインズ経済学とも理論的繋がりを持っていることが明らかになった。とりわけ、資本化という現象は、証券発行や銀行貸付において意味を持つだけでなく、現代金融においても広く応用の実態が進んでいる。金融の証券化(セキュリタイゼーション)やデリバティブの盛行はその一つの展開部面にすぎない。その意味で、当初の想定以上に、本課題の設定が学説史的意義を持ち、理論として長い射程を持つことが明らかになった。本格的に考察することはできなかったが、現代における商業銀行の長期貸付への進出、金融の証券化(セキュリタイゼーション)、デリバティブの膨張を説明する理論として発展可能性をもつ議論であることが明らかになった。 この視点をさらに拡張し、収益力の資本化論の学説史的系譜を解明する方向性を探る必要がある。今後、ヴェブレンが収益力の資本化という着想を得た契機や基盤をさらに掘り下げる必要がある。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ヴェブレンにおける「企業資本」を膨張させる信用の機能と収益力の資本化に関する理論に焦点を当てた。問題は、ヴェブレンが収益力の資本化と自律的な信用拡張の作用メカニズムをどのように理解していたかである。 本研究では、ヴェブレンに拠りながら、収益力の資本化と信用拡張の中味を明らかにする。ヴェブレンが理論的に考察したのは、この乖離が生じてくるメカニズムである。それに際し、彼は、資本についていくつかの概念的整理を行なっている。すなわち、資本とは、一定の利益を生み出す貨幣価値として定義される。資本の価値とは、一定の貨幣利得を生み出す力すなわち収益力によって決定される。資本の形態は、実物資本、貨幣的財産、無形資産からなると考えている。そして、「企業資本」とは、自己資本+借入れ資本である。先の乖離は、「企業資本」のうち、借入れ資本が貸付信用の拡張によって増大していくメカニズムの作用を通じて発生する。この作用の内容は次のように考えられている。企業は、自己資本の担保化により外部資金を調達することによって「企業資本」を増加させようとする。競争戦の中にある企業は、他企業より多くの資本を調達することによって競争に勝とうとする。その際、独占的支配力、技術等、何らかの事情によって他企業に対する格差利益を確保できるようになる。他企業に対して格差利益を生み出す能力は、無形資産化していく。そうなると安定的に格差利益を生み出す能力すなわち無形資産を担保にしてさらなる借入れや証券発行が行われる。それによって、金融機関との連携を通じて巨額の資金調達が可能になる。独占企業、金融機関ともに巨大な金銭的利得の獲得が可能となる。景気循環の活況期や企業合同運動は、こうした大々的な活動が展開される場面となる。結果的に、貨幣的財産の物的資産に対する乖離が生じてくる。 以上を解明できたので進捗は順調であると言える。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の進捗状況からして、今後の研究の推進策として次の方向を目指すことが適切である。 まず、ヴェブレンにおける収益力資本化の社会経済的基盤の理解というかたちで明らかにする必要がある 。すなわち、このような収益力の資本化という発想に至るヴェブレンの思考過程を、彼が見ていた資本主義における社会経済的基盤と関連付けながら明らかにする。これは、如何なる発想から定期的利得すなわち収益力が資本化するという理論を構想したのかという論点については、これまでほとんど突っ込んだ考察がなされてこなかったという理由による。そこで、今後においては、収益力の資本化という着想に思い至ったヴェブレンの思考過程を探る方向性を目指す。 その際、次の視点が重要である。第一は、ヴェブレンは、彼が観察していたアメリカ資本主義の実態を大まかにどのように捉えていたのかということである。1870年代から大不況期に入っていったイギリスに対し、アメリカは緩やかな成長過程に入っていった。重化学工業分野を中心に独占企業が生まれ、巨大な固定資本設備と莫大な資金需要を生み出した意味でこの視点は重要である。第二に、収益力を追求する経済主体の問題である。19世紀のイギリス資本主義においては、綿工業、毛織物工業を主要部門として産業資本の活動が主役であった。これに対し、19世紀末から20世紀にかけてのアメリカ資本主義のもとでは、独占的な営利企業が中心であった。つまり独占企業の金融的行動に焦点を当てることが有効である。加えて、利潤の追求は、産業・金融一体となって実現した。第三に、収益力の資本化は、19世紀のイギリス資本主義を観察した新古典派の経済学者やヴェブレンと同時代のアメリカ資本主義を観察した経済学者に対比して、どのような特徴を持っていたのかということである。ここで必要なのは、比較経済学史的な視点である。
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