研究課題/領域番号 |
23K01332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07030:経済統計関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中村 信弘 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 特任教授 (90323899)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 共和分構造 / ジャンプの自己・相互励起性 / 確率分散 / ベイズ推定 / VIX / 共和分金利期間構造 / cointegration / self excitation / mutual excitation / asset pricing / investment |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、経済変数、金融資産価格などに現れる共変動性を説明できる新たな理論・モデル構築とそれらの実証を行う。特に、最近、理論の発展が著しい時系列のジャンプにおける自己励起性を複数変量に拡張した相互励起性と、共和分性の定式化に関する新しいアプローチを探求する。共和分性に関しては、無裁定価格付けが可能な金融資産・契約に現れる共和分性に焦点を当て、無裁定原理を融合した共和分モデルの研究を行う。これらの共変動性に関する研究成果は、共和分性を反映した資産運用や相互励起性を考慮したリスク管理等に生かすことが期待でき、実務への大きな波及効果をもつであろう。
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研究実績の概要 |
共和分構造をもつ2資産の価格過程を記述する確率微分方程式(SDE)に平均回帰性をもつ確率分散項と相互励起型のジャンプ項を導入した変動過程を研究した。SDEのパラメータと潜在過程である確率分散過程とジャンプの強度過程を推定するために、観測量としてそれぞれの資産のボラティリティ指数(VIX)やオプション価格の理論計算式の導出を行った。実際に共和分構造が観測される2資産には、米国とユーロ圏の代表的株式指数であるS&P500とSTOXXとそれぞれのVIX指数を用いてベイズ推定を行い、モデルのデータへの適合度が良好であること、共和分構造、ジャンプの相互励起性の有無を統計的に有意に検出できることなどを実証した。 本研究でのベイズ推定では、観測量であるVIXの理論計算で、解析解が得られないため、常微分方程式の数値解法を組み込んだベイズ推論を行っている。この方法論の拡張として、派生商品の価格過程が従う偏微分方程式(PDE)の数値解法を組み込んだベイズ推論の可能性を探求し、潜在過程の次元が1次元の場合で、PDEに基づくベイズ推定の方法を開発した。 更に、複数の金利の期間構造に共和分性が観測される場合に、金利の確率分散や金利のジャンプ強度の自己励起性を考慮したモデルを構築し、米国の(名目)債券利回りとスワップ金利(OIS)の実データを用いて、適合するモデルの可能性を研究し、ユーロ圏で同様に観測される共和分性をもつソブリン債との比較・考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
確率分散、ジャンプ強度などの潜在変数を含む変動過程の統計的推定であるため、原系列の他に、それらから派生するVIXやオプションの価格データなどの追加的観測量を用いることが推定精度の向上に有効である。そのため、本研究の実証分析では原系列のオプション価格を用いることを当初より計画しており、2023年度は、概ね予定通り、米国の個別株、指数オプションのデータベースの購入を行った。 2023年度までで得られた研究成果は、学会発表を速やかに行い、3つの学術論文に公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、取引所が公表するVIX指数だけでなく、2023年度に契約したデータベースを使い、個別株オプションデータから自前で個別株のVIX指数を計算し、本研究テーマの実証研究を広範に行っていく予定である。 2次モーメントに関係するVIX指数と同様に、3次、4次などの高次モーメントに対応するモデル・フリー指数を計算できるので、これらを更に観測量に追加してモデルの統計的推定が可能かどうか検討する。 その他、本研究から派生する研究課題として、共和分関係にあるリスク資産で分散や歪度、尖度に関して投資家の要求するリスク・プレミアムの性質を明らかにする研究に取り組む。
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