研究課題/領域番号 |
23K01368
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
土居 直史 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30633945)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | パススルー / 品質選択 / 需要関数の形状 / 品質 |
研究開始時の研究の概要 |
費用や税が価格にどれほど転嫁されるか(パススルー)についての理解は、生産に関わる規制や政策全般について、その影響を予測するための基礎となる。
本研究は「企業による品質決定を考慮した場合、費用増による価格・品質への影響が市場特徴(競争の度合いや需要関数の形状など)によってどのように変わるか」という問いに対して、特に「品質の性質(品質向上が限界費用を増やすかどうか)」による結論の相違を明らかにすることを目的とする。
理論的整理をおこなったうえで、品質の性質が異なると考えられる複数市場(航空旅客市場およびマーガリンなどの食品市場)のデータを使う実証分析をおこなう。
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研究実績の概要 |
2023年度には、実証分析の土台となる理論的枠組みを固めることを目的として、企業による品質選択を考慮した場合、費用増による価格・品質への影響が需要関数の形状などによってどのように変わるかを理論的に考察した。 今年度の理論分析では、税・費用が変化したとき、価格増加や品質向上に関する企業のインセンティブがどのように変化するかを明らかにした。そのインセンティブ変化は、需要量変化による「数量効果」と、需要の価格に対する感度と品質に対する感度の比率の変化による「感度比効果」に分解できることを示した。そして、どちらの効果も需要関数の形状(価格や品質に関する1階・2階の導関数)に強く依存することが分かった。 また、需要関数の形状によっては費用が上がったときに価格が下がること(負のパススルー)や、品質が上がることも十分起こりうることが確認された。負のパススルーは、企業による品質選択がある場合特有の結果である。既存研究における品質外生の設定では、通常、税・費用増により価格は上がる。しかし、品質内生の場合、税・費用増による品質低下が、価格を下げるように働く可能性がある。そのような働きが十分強くなるような状況では、税・費用増によって価格が上がらず、むしろ下がるということも起こりうることが分かった。インセンティブ変化の分析を踏まえて、どのような需要関数の場合に負のパススルーが起こりやすいかも整理した。 得られた結果をまとめた論文を英文査読誌に投稿した。結果は残念ながら不採択だったが、有益な査読レポートが得られたため、それを基に大掛かりな改訂をおこなった。現在最終確認中で、それが終わり次第別の英文査読誌へ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2023年度には実証分析の土台となる理論的枠組みを固める予定であった。成果をまとめた論文の改訂版を投稿する間際まで進められているので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究実施計画に沿って実証分析をおこなう。品質の性質(限界費用と無関係/限界費用を増やす)の異なる複数の市場のデータを使い、費用が増えたときの価格・品質への影響を比較する。 まず、限界費用と無関係な品質としては、航空産業のフライト数(1日あたりの便数)に注目する。フライト数は、航空旅客需要に影響を与える重要な品質指標のひとつであることが知られている。それが多いほど、旅客は望ましい時間に移動できるようになるためである。その一方で、フライト数が増えても旅客1人を運ぶための費用(限界費用)は変わらないと考えられる。 限界費用を増やす品質としては、食品の1パッケージ当たりの容量に注目する。例として、まずはマーガリンのPOSデータの分析を試みる。消費者にとって(同じ価格であれば)1パッケージ当たりの容量は基本的には多いほうが良いはずなので、それはある種の品質指標とみなすことができる。また、容量が多いほど限界費用は大きくなると考えられる。 それぞれの市場について、以下のような分析を予定している。まずは、比較的単純な回帰モデルで推定する(誘導系分析)。被説明変数を価格または品質とし、説明変数に費用変数や市場特徴、それらの交差項を含む回帰モデルを推定する。その後、需要・供給の構造モデルを推定し、それを使って費用増の影響をシミュレーションによって推計する(構造推定分析)。これは誘導系分析と補完的な分析と位置づけられる。 現時点では、2024年度に航空産業のデータ整備および誘導系分析、2025年度に食品産業のデータ整備および誘導系分析、2026年度以降にそれぞれの産業の構造推計分析を予定している。
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