研究課題/領域番号 |
23K01405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
後藤 康雄 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (00571192)
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研究分担者 |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 中小企業 / 生産性 / 政策支援 / 経済ショック / ゾンビ企業 |
研究開始時の研究の概要 |
日本経済は度重なるマクロショックに見舞われてきた。経営環境の厳しい中小企業部門には、そのたび大規模な流動性支援等がなされてきた。近年これらが非効率企業を温存し、経済成長を妨げているのではないかという問題意識も強まっている。構造改革を志向する施策も試みられているが、今なお中心は事業継続型である。本研究は、相次ぐショック、とりわけコロナ禍を経て導入された様々な中小企業支援策が生産性に及ぼす影響を、マクロ変動と関連づけつつ実証的に検証する。その特徴は、(1) 流動性支援等の事業継続型施策だけでなく改革型施策も含めた比較分析、(2) 生産性と絡む労働移動への着目、(3)基礎データの独自性、である。
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研究実績の概要 |
今年度の事績を、(i) データ整備・分析、(ii) 手法の検討、(iii) 実務的視点および社会への発信、の3点から整理する。まず(i)についてであるが、本研究が解明を目指そうとしている大きな方向のひとつに、中小企業に対する支援策と企業のニーズ・活動(経営計画等)の合致度合いがある。ただし、中小企業への支援策には幅広いメニューが用意されており、それらを何らかの視点で分類することが必要となる。本研究では、各支援策が事業継続型か構造変革型か、という分類軸を設けた。さらに、コロナ禍などを通じて講じられた種々の施策が、既存施策の適用か、その拡充か、新規施策か、という軸も設定した。その上で、代表者が中心になった実施した「コロナ禍における中小企業支援策に関するアンケート調査」の元データを集計・解析した。この結果を代表者の研究室ホームページ等を通じて幅広く公表し、後述の通り行政当局や有力メディアからも高い関心が示されているところである。このほかデータ面については、大手企業(以下A社)との間で特例的な利用契約を交わして利用が認められた業務データを整理し、テキスト形式、エクセル形式で得られたデータをStataのデータファイル化するなど、統計解析の基盤づくりを進めた。 (ii) については、内生性を扱う手法等に関する文献の展望を進めたほか、今回の分析に用いるデータの特性(変数の種類が多岐にわたるパネルデータであるなど)を鑑み、機械学習による分析を視野に入れ、専門家をまじえた研究会を開催(2024年2月)したほか、解析に用いるソフトウエアや具体的なプログラムの検討に着手した。 (iii) については、先述のアンケート集計結果をまじえ、複数の行政担当者や有力メディア(全国紙)記者との意見交換会を多数実施し、その一部はメディアへの寄稿やコメントなどの形で社会に発信をした(『金融ジャーナル』2023年5月号ほか)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初に予定していた「中小企業に対する支援策と企業のニーズ・活動(経営計画等)の合致度合い」について、すでに独自データを用いたプレリミナリーな分析を行い、総じて支援対象となった中小企業からポジティブな評価が得られていること、その一方で支援策に関する情報の周知や手続きの簡素化などを進める余地が窺われること、などの全体感を得た。また、もう一つ当初から計画していた内生性等を考慮した高度な分析手法の検討については、順調に文献調査に基づく展望の作業が進められたほか、専門家の協力も得て新たに有望な方向性(機械学習)にも踏み出しつつある。これは当初計画以上の進捗といえる。さらに、初年度であったにもかかわらず、本テーマに対する社会的関心の高さを背景に、政策担当者等の協力を得やすい環境(意見交換会の開催等を通じた人的つながり)が構築できつつある。以上を総合的に勘案すると、現時点において本研究計画は順調に進捗できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に整備を進めた独自データ(アンケート調査および企業からの提供を受けた事業データ)を具体的に解析するための手法の検討を一段と進め、(i) 具体的にどの手法を適用するか、(ii) それを行う統計ソフトウエアとした何を用いるか、(iii) どのようなプログラムを作成するか、(iv) 共変量等に用いる関連データのいかに整備するか、などを固めていく。その上で、具体的なプログラム作成とデータ解析に着手する。 また、分析の際の学術的な視点を整理する。具体的には、各種の中小企業支援策の根拠に関する理論的な解釈、中小企業の生産性に関する近年の学術的な成果の展望、中小企業のセグメント化(属性に基づく分類)とそこから予想される実証分析上の仮説、などである。 現実の動きも激しい政策支援の動向に関するフォローも重要である。特にこのところの新たな動きである、経産省や中企庁による中堅企業支援策については、施策の内容やその経済学的な意味合いを、学術的、政策的な視点から整理しておくことが有効と考えられる。その議論の過程において得られた知見は、研究の遂行と同時並行で社会に発信していく。
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