研究課題/領域番号 |
23K01438
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆 下関市立大学, 経済学部, 教授 (90235359)
|
研究分担者 |
釜田 公良 中京大学, 経済学部, 教授 (50224647)
濱秋 純哉 法政大学, 経済学部, 准教授 (90572769)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 戦略的遺産動機 / 遺産分割 / アテンション / 居住地選択 / 親の遺産分割 / 親の介護 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、親が戦略的遺産動機に基づいて、どのように二人の子(長子・次子)に遺産を分割し、子の居住地が決められるのかについて理論的なモデルを提示することである。また理論的に求めた均衡と実際のデータが整合的であるかについてテスト(実証分析)を行う。さらには政策的な効果の分析、例えば公的年金などの社会保障制度や家を相続するときの相続税の減税(ただし財源としては消費税)などの税制が遺産分割や子の居住地に与える影響についての分析(シミュレーション分析)を行う。
|
研究実績の概要 |
現在日本では超高齢化がすすみ、家族の誰が老親の世話を行うかが大きな社会問題になっている。この点について、親からの遺産相続やその背後にある遺産動機の観点から解明することを試みる。日本の社会的慣習(social norm)では長子(特に長男)が家を継いで親の面倒をみることが多いが、これを経済合理性によって明確に説明ができるであろうか。 本研究では親の遺産動機に基づいて子の居住地選択や親に対するアテンションの供給を考えるが、遺産動機としては「戦略的遺産動機」を考察の対象とする。本研究での文脈における戦略的遺産動機とは、親はより多くのアテンションを得るために、遺産を戦略的に利用して子を自分の近くに居住(又は同居)させようとする動機である。具体的には、親は長子(次子)の居住地を遺産分配比率に関連付けた遺産ルール(親が決めた居住地を選ばなければ、遺産分配比率をゼロにするというルール)を長子(次子)に提示することによって、子の居住地を親の居住地に近づけ、それによって親に対するアテンション供給をより多く得ようとする動機である。Hamaaki et.alの遺産分割の実証分析によると、日本では(米国のように)兄弟(姉妹)間で遺産が均等に分割されているわけではなく、かなりの偏りがあることが示されている。背後には親の遺産動機(戦略的遺産動機)があることを強く示唆するものであることが指摘されている。 したがって本研究の目的は、親が戦略的遺産動機に基づいて、どのように二人の子(長子・次子)に遺産を分割し、子の居住地が決められるのかについて理論的なモデルを提示することである。また理論的に求めた均衡と実際のデータが整合的であるかについてテスト(実証分析)も行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度において、ほぼ理論モデルが完成したところである。現在それを論文にしているところであり、今年度の夏ごろには、Discussion Paperとして発表するつもりである。得られた結論としては以下の通りである。 日本の伝統的な慣例(社会的慣習)では,親は長子と同居することにより長子に実物資産(実家)を相続させ,次子は都会など遠方に居住するケースが多いが,それは遺産額が 十分に大きいときであることが理論的に示された.これは,社会的慣習が経済合理性によって裏付けられたことを示している.一方,遺産額が、それより幾分小さいのであれば,次子に遺産ルールが提示され,この場合は結果的にはKonrad et al.(2002)の結論と同じになる.そして遺産額がその間にあれば,長子に遺産ルールを提示しても次子に提示しても無差別となることが示された. 今年度からは理論的に求めた均衡と実際のデータが整合的であるかについて実証分析も行う。
|
今後の研究の推進方策 |
理論的に得られた結果をDisucussison Paperにまとめるとともに、学会発表などを行っていく。そして理論的に求めた均衡と実際のデータが整合的であるかについてテスト(実証分析)を行う。さらには政策的な効果の分析、例えば公的年金などの社会保障制度や家を相続するときの相続税の減税(ただし財源としては消費税)などの税制が遺産分割や子の居住地に与える影響についての分析(シミュレーション分析)を行う。 引き続き理論的成果を得るために、佐藤隆(研究代表者)は釜田公良(研究分担者)が在籍している名古屋市にある中京大学を年に3~4回程度訪れる予定である。また実証分析を行うために、濱秋純哉(研究分担者)が在籍している東京都にある法政大学に1~2回訪れる予定である。
|