研究課題/領域番号 |
23K01441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
中村 さやか 上智大学, 経済学部, 教授 (20511603)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 健康 / 生活習慣 / 食習慣 / 政策効果 / 景気変動 / 子ども / 食生活 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、マクロ経済状況や健康政策などの外的状況が健康状態や生活習慣、特に食習慣に与える影響を良質なデータを用いて分析することで、以下の問いに答える。 -景気変動は生活習慣へどのような影響を及ぼすか? 特に子供に関して、生活習慣への影響を通じて健康にどのような長期的影響を及ぼしうるか? -両親、特に母親への労働需要の変化は子供の食生活や健康状態にどのように影響するか? 母親就業が子供の肥満を増加させるという既存仮説は支持されるか? -集団検診などの健康政策は生活習慣や健康状態にどのような影響を及ぼすか?
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、景気変動が生活習慣に与える影響や健康政策による生活習慣への改善効果を明らかにすることで、有効な健康増進政策や健康格差の解消策についての政策含意を得ることである。当該年度では特に、国民健康・栄養調査の調査票情報から得られた個票データを用いて、労働需要の変化や政策による生活習慣、特に食生活や健康状態への因果的効果を明らかにすることを予定していた。当該年度に実施した研究の成果は、分析に必要なデータの使用許可が、2023年9月に申請したものの2024年4月1日現在でも得られていないため限定的なものにならざるを得なかった。しかし、労働需要の変動が健康状態や生活習慣に与える影響についての国内および海外の先行文献のレビューを進めるとともに日本のデータの利用可能性を調査した結果、以下の点が明らかになるという成果があった。まず、結果変数の選択に際して文献調査から明らかになった点としては、景気変動が健康状態に及ぼす影響を分析する際に主観的な健康指標を用いることのさまざまな問題点が指摘されているにも関わらず客観的な健康指標を用いた先行研究が少ないことから、客観的な健康指標を用いることが重要である。また、子供の健康や食生活についても、先行研究が少なため貢献の余地が大きい。次に、地域別の労働需要の変化を表す指標については、日本で長期間の地域別データが利用可能なものとして、先行研究で用いられている有効求人倍率や都道府県別失業率に加え、県民経済計算、都道府県別地価調査が挙げられる。また海外の先行研究で用いられている「推定される雇用増加率」についても、日本のデータで同様の指標が作成可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度では、国民健康・栄養調査の調査票情報の目的外使用を厚生労働省に申請し、調査票情報から得られた個票データを用いて、労働需要の変化や政策による生活習慣、特に食生活や健康状態への因果的効果を分析することを予定していた。国民健康・栄養調査の調査票は調査項目が多く、年による違いも大きいため、申請には多大な時間を要したが、当初の予定より早く2023年9月に申請書類案一式を送付できた。しかしその後は同年10月、11月、12月、2024年1月に書類について厚生労働省より訂正の要請があり、全て1週間内に対応したが、未だに使用許可は得られていない。ただし、2024年3月に厚生労働省に確認したところ、2024年度中には利用可能になる見込みである。データが利用可能になるまでに申請からこれほど時間がかかることは、今まで同調査の目的外利用を複数回申請し比較的短期間に許可を得た経験からも予想外であり、そのため研究の進捗は遅れていると言わざるを得ない。一方で、前述した通り、労働需要の変動が健康状態や生活習慣に与える影響についての国内および海外の先行文献のレビューを進めるとともに日本のデータの利用可能性を調査した結果、健康状態や生活習慣を表す結果変数をどのように選択すべきかについて明確な方向性が得られ、また、地域別の労働需要の変化を表す指標として、日本で長期間の地域別データが利用可能なものをリストアップすることができた。このことにより、先行研究で何がどこまで明らかになっており、まだわかっていない点は何か、今後どのような分析を行うべきか、また、それによりどのような貢献が可能か、などの点がより明確になった。そのため、遅れてはいるものの重要な点で進捗があり、一定の成果は得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では第一に、国民健康・栄養調査等の調査票情報から得られた個票データを用いて、労働需要の変化や政策による生活習慣、特に食生活や健康状態への因果的効果を明らかにする。要約統計表を作成するとともに、さまざまな生活習慣、健康状態、生活環境、経済状況の指標を被説明変数とし、労働需要の指標に加え、さまざまな個人特性を説明変数として回帰分析を行う。要約統計表の作成や回帰分析においてはサブサンプル分析(サンプルを個人特性により分割した分析)を行い、年齢、世帯の経済状況、および家族構成等による労働需要の変化影響の差異を検証する。今後は国民健康・栄養調査等についても調査票情報の目的外使用を申請し、得られた個票データを用いて分析を補完する予定である。 第二に、これらの個票データを用いて政策変化や政策の影響の外生的差異を識別に利用し、差の差分析や回帰不連続デザイン等を用いて政策による生活習慣や健康状態への因果的効果を明らかにする。影響に外生的差異がある政策としては市区町村により公立中学校における実施状況が異なる学校給食が、政策変化としては、例えば2010年の妊娠糖尿病の診断基準の厳格化や2008年の特定健診の導入がある。政策効果には個人差が非常に大きいことが予想されるため、サブサンプル分析を用いて、年齢、性別、社会経済的地位や地域等による政策効果の差異を検証する。分析結果を論文にまとめ、国内および海外の学会で学会報告や研究発表を行い、得られたフィードバックをもとに論文を改稿し、査読付き国際学術誌に投稿する。
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