研究課題/領域番号 |
23K01456
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | コーポレートガバナンス / 取締役会 / 社外取締役 / 人的資本 / 雇用 / ESG / トップマネジメント |
研究開始時の研究の概要 |
この研究の目的はコーポレートガバナンスと人的資本投資およびその開示の関係について実証的に分析することである。人的資本投資が長期的に企業価値を高める効果があると投資家や社外取締役が考えるのであれば、コーポレートガバナンスが充実している企業では積極的な人的資本投資が行われるであろう。一方、人的資本投資は短期的には費用であると投資家や社外取締役が考え、かつ、企業が短期的な利益を重視するのであれば、逆の関係もありうる。近年、人的資本投資に対する注目が高まっている一方で、実証的な分析は多くはない。そこで、本研究では日本企業のデータを用いてこの関係を分析する。
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研究実績の概要 |
この研究の目的はコーポレートガバナンスと人的資本投資およびその開示の関係について実証的に分析することである。人的資本投資が長期的に企業価値を高める効果があると投資家や社外取締役が考えるのであれば、コーポレートガバナンスが充実している企業では積極的な人的資本投資が行われるであろう。一方、人的資本投資は短期的には費用であると投資家や社外取締役が考え、かつ、企業が短期的な利益を重視するのであれば、逆の関係もありうる。近年、人的資本投資に対する注目が高まっている一方で、実証的な分析は多くはない。そこで、本研究では日本企業のデータを用いてこの関係を分析している。 いうまでもなく、人的資本投資は多くの側面と関連するため、幅広い分析が必要である。 本研究では、日本の労働市場の現状を把握した上で、企業が人的資本投資を行うためにどのような体制をとっているのかに注目する。このような体制の進展が企業の行動や業績にどのような影響を与えているのかについて注目する。日本の労働市場の現状としては、伝統的な雇用体系がどのように変化しているのか、非正規労働の状況や働き方改革の進展はどのようになっているのかについて現状を把握する。 本研究のもう一つの柱が日本のコーポレートガバナンスの現状を把握することである。日本のコーポレートガバナンスは大きく変化してきた。特に取締役会については取締役会の規模が縮小され、社外取締役が導入され、またダイバーシティが進展してきている。しかし、これらの変化でコーポレートガバナンス改革が終わるわけではない。このような体制が実効性を保つためには、それを支える体制が必要である。執行と監督の分離という観点からは、監督を行う取締役会に加えてトップマネジメントチームのあり方に関する議論が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はまず、日本企業の雇用の実態について文献研究及び集計データを用いた分析を行った。その結果はILOから出版物の1章となっている。そこでは、まず日本の労働生産性の現状を確認した。生産性の上昇は G7 諸国の平均に比べて小さく、潜在成長率は低下している。この背後にあるのは日本企業の社内研修による伝統的なスキル形成は、従業員のスキル蓄積にとってもはや十分ではない可能性が示唆されている。このことは労働者のスキルアップには、教育や職業訓練などの他の種類の訓練が不可欠であることを意味している。 人的資本経営はESGと密接な関係がある。また、近年、いくつかの企業がESGを推進するための体制を整えるようになっている。その代表がサステナビリティ委員会等の社会的責任に責任を持つ委員会の導入である。そこで、これらのCSR委員会の導入の現状を把握した上でCSRパフォーマンスに与える影響を分析した。2011年から2021年までの日本の上場企業をサンプルとし、内生性の問題を解決するために、PSM-DIDを用いている。その結果、CSR委員会の導入がCSRパフォーマンスを有意に向上させることが明らかとなり、持続可能性の実現に向けた構造的かつ献身的な取り組みの重要性が裏付けられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、いくつかの側面から研究を推進する。一つはトップマネージメントチームの現状を把握することである。なぜ、経営者およびトップマネジメントチームに注目するのか。それは、先行研究でも繰り返し指摘されているように、だれが経営者なのか、経営者がどのような能力や特性をもっているかということが企業の業績や行動に決定的な影響を与えるためである。コーポレートガバナンスに関連して、取締役会はどうあるべきか、と言うことについては広く議論されている。一方、トップマネジメントチームやCEOがどうあるべきか、という点についての議論は乏しい。日本企業の今後を考える際にトップマネジメントチームやCEOについて現状やあるべき姿を議論することは不可欠であろう。コーポレートガバナンス改革の一つの方向性が執行と監督の分離にある以上、執行の体制について議論することは不可欠である。
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