研究課題/領域番号 |
23K01475
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸村 肇 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90633769)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | コーポレートガバナンス / 日本経済の長期低迷 / レバレッジ / 上場企業 / 信用創造 / 長期停滞 / 日本経済 / 企業生産性 / キャッシュフロー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1980 年代以前と1990 年代以降の日本の資金循環の違いとして政府部門の資金不足(借入)が拡大する一方で、企業部門は資金不足から資金余剰(債務削減、金融資産保有の増加)に転じた点に着目し、この事実が1990 年代から続く日本経済の低成長についてどのようなインプリケーションを持つかを分析する。まず、日本の上場企業データを使い、日本企業の債務資産比率(レバレッジ)の変化が企業経営の規律づけに影響を与えたかを実証的に分析する。同時に、財政赤字が企業へのキャッシュフローを生むことで企業債務の削減を可能にした結果、日本企業の平均的なパフォーマンスを低下させたかの推計も行う。
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研究実績の概要 |
本プロジェクトの研究トピックの一つである「日本の無借金企業とそれ以外の企業で企業経営の規律づけやパフォーマンスに差があったかどうか」について、2004年から2019年までの日本の上場企業データを使って実証分析を行った。債務の存在が企業パフォーマンスに影響するチャンネルには、企業経営の規律付け以外にも、レバレッジ効果による自己資本利益率(RoE)の向上や、過剰債務による投資抑制など、様々なものがあり得るので、債務の存在による企業経営の規律付け効果をどのように抽出するか、ということが本研究の大きな課題になる。この点については、株主によるコーポレートガバナンスの強度についての指標と企業パフォーマンスの間の連関が、各企業のレバレッジの程度により弱まるかどうかを回帰式を使って推計した。もしレバレッジの高い企業では株主によるコーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの連関が弱い場合、債務の存在に株主による企業経営の規律付けを代替する効果があるということになる。本研究では、株主によるコーポレートガバナンスの強度についての複数の指標を使ったが、どの指標を使った場合でも上記のような推計結果が確認された。また、将来の収益を生む投資機会があるから債務を追って投資を行うというような、レバレッジの内生性に対処するため、上場企業の中の無債務企業に有債務企業を傾向スコアマッチングを使ってマッチさせたサンプルを生成し、上記の推計結果の頑健性を確認したが、こちらの分析でも、株主によるコーポレートガバナンスの強度についての指標と企業パフォーマンスの間の連関は、有債務企業の方が統計的に有意に小さいという結果を得た。これらの推計は安田行宏一橋大学教授との共同研究の形で行われ、論文の初稿を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトの研究トピックの一つである「日本の無借金企業とそれ以外の企業で企業経営の規律づけやパフォーマンスに差があったかどうか」について、論文の初稿の執筆が終わり、学会等での対外発表が可能な状況になっている。また、この研究で債務の存在による企業経営の規律付け効果が確認されたため、本プロジェクトの次の段階である「日本の財政赤字が企業へのキャッシュフローを生むことで企業債務の削減を可能にした結果、企業のパフォーマンスにどのような影響を平均的に与えたか」の分析に進むことが可能な状態になっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「日本の無借金企業とそれ以外の企業で企業経営の規律づけやパフォーマンスに差があったかどうか」についての実証研究については、安田行宏一橋大学教授との共著論文の初稿の執筆が終わり、2024年度内の学会等での対外発表を行い、十分なフィードバックを受けられた段階で、査読付き国際学術雑誌への投稿を予定している。
次の段階である「日本の財政赤字が企業へのキャッシュフローを生むことで企業債務の削減を可能にした結果、企業のパフォーマンスにどのような影響を平均的に与えたか」の分析については、まず、2000年代以降の日本において、どのような企業が債務を削減したのか(純債務に注目する場合は、現金保蔵を増やしたのか)の実証分析を上場企業データを使って行う予定である。合わせて、同時期の日本の上場企業がマクロの財政ショックにどのように反応したかを上場企業データを使って推計することも予定している。
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