研究課題/領域番号 |
23K01481
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
荻山 正浩 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (90323469)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | エネルギー / 経済発展 / 再生可能資源 / 水資源 / 河川 / 電力 / 農業 / 灌漑 / 資源 / 河川開発 / 日本 |
研究開始時の研究の概要 |
資源の乏しい日本は、豊富な労働力を用いて工業化に成功したと考えられてきた。本研究は、こうした説明に疑問を呈し、戦前日本の工業化は、労働力の多用もさることながら、むしろ農業に使用されてきた再生可能資源を活用することで達成された点に注目し、それを可能にしたメカニズムを明らかにする。そのため、戦間期の日本では、農業に用いられていた河川の水が発電に利用され、工業化を支える主要なエネルギー源となっていた事実に着目し、農業による河川水の利用が進んでいた近畿地方とそれが遅れた北海道の事例を対比し、水資源の利用をめぐる発電と農業の競合が、規模の経済性を活かした大規模な水力発電の発展を促進したことを解明する。
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研究実績の概要 |
令和5年度には、予期せざるエフォートの低下から、後述するように当初の予定を大幅に変更し、下記の3つの課題を遂行した。
1. 戦間期北海道の河川の電源開発に関する資料調査:北海道では、本州以南の本土と違って、稲作の普及の遅れから、戦間期に至っても河川水の利用をめぐる水力発電と農業の競合関係は限定的であった。この点が北海道の河川の電源開発に与えた影響を分析するため、札幌市による水力発電所の建設計画に注目し、札幌市公文書館において、関係資料として戦間期の同市会会議録の調査を行った。 2. 戦間期九州の河川の電源開発に関する資料調査:九州、なかでも工業化が進んだ九州北部では、域内に炭田が存在し、安価に石炭を利用できたため、戦間期に至ると、石炭火力による電力供給が発展した。それでも戦間期後半には、電力需要が急増した結果、九州北部に拠点を置く電力会社は、まず周辺地域の河川、続いて水力の豊富な九州南部の河川を対象として水力発電所を建設し、九州北部に送電を行うようになった。そこで、佐賀県と宮崎県の事例に注目し、電力会社が河川水の利用をめぐる農業との競合をどう回避し、河川の電源開発を行ったかを解明するため、佐賀県公文書館と宮崎県文書センターにおいて、水力発電所の建設計画の審査記録を記した県庁資料を調査した。 3. 戦間期長野県における河川の電源開発の分析:戦間期の長野県では、河川を管理していた長野県庁は、電力会社による河川の電源開発の計画を審査する際、農民の利益を保護するため、発電所による河川水の使用が水田への灌漑用水の供給に支障をきたさないことを条件として、電力会社の河川利用を許可していた。こうした事実を同県庁の資料をもとに明らかにし、その成果を英文のワーキングペーパーにまとめる作業を行った。ただ、後述のエフォートの低下のため成稿までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
この評価としたのは、令和4年度、本研究計画を申請した後、年度末に、翌5年度からの所属大学の大学院部局長に任命され、校務負担が申請時に想定した以上に増加し、申請時の計画と比して、本研究に本来充当すべきエフォートの低下を余儀なくされたことに起因する。その結果、継続して集中的に従事することが必須となる作業、具体的には、資料調査の結果を整理して論文にまとめる作業が最も阻害されることが判明した。実際、前述の長野県のケースに関して、当初、令和5年度末までに、資料調査の分析結果をワーキングペーパーにまとめる作業を完了する予定であったが、それを果たすことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前述のエフォート低下によって、論文作成は最も影響を受けるが、他方、本研究計画で予定している資料調査は、国内での数日間の調査であるため、校務のないタイミングを狙って調査を行うことができる点も明らかとなった。そこで、調査結果を論文にまとめる作業が遅延することへの対応として、研究計画の後半に当初予定していた資料調査を先行して実施することとした。前述の部局長の任期は令和6年度末まで続くため、少なくとも令和6年度中は上記の対応を継続する。 具体的には、下記の資料調査2件を先行して実施することを計画している。1つは、前述した戦間期北海道の河川の電源開発を対象とした資料調査、もう1つは、新規プロジェクトとして、戦間期前夜における奈良県の河川の電源開発を対象とした資料調査である。 さらに令和5年度からの継続課題として、戦間期長野県の河川の電源開発に関する分析成果をワーキングペーパーにまとめる作業を完了し、論文投稿が可能となる水準まで改善を行う予定である。
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