資源の乏しい日本は、豊富な労働力を用いて工業化に成功したと考えられてきた。本研究は、こうした説明に疑問を呈し、戦前日本の工業化は、労働力の多用もさることながら、むしろ農業に使用されてきた再生可能資源を活用することで達成された点に注目し、それを可能にしたメカニズムを明らかにする。そのため、戦間期の日本では、農業に用いられていた河川の水が発電に利用され、工業化を支える主要なエネルギー源となっていた事実に着目し、農業による河川水の利用が進んでいた近畿地方とそれが遅れた北海道の事例を対比し、水資源の利用をめぐる発電と農業の競合が、規模の経済性を活かした大規模な水力発電の発展を促進したことを解明する。
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