研究課題/領域番号 |
23K01495
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
斎藤 修 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (40051867)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 自由営業型医療体制 / 府県別市町村別医療従事者統計 / 府県別市郡部別乳児死亡統計 / 県内総生産 |
研究開始時の研究の概要 |
戦前日本の自由営業型医療体制が死亡抑制に与えた正負両面の効果を、1920-30年代医療従事者統計と死亡統計に県内総生産統計を加えたデータベースを構築し、パネル分析により検証する。医療体制の指標は医師・薬剤師・助産婦数をとり、死亡統計は乳児死亡率を新生児と新生児後(生後1か月以上)に分解し、疾病は水系感染症・小児性疾患・結核に分類する。これらをいずれも府県別/市郡別で、県内総生産系列もそれに合わせた市郡別への分割を試みる。これら死亡リスクに対する医療体制の効果を地域経済の発展と構造変化の影響とともに計測し、医療体制がもったであろう正負効果の最終バランスがどちらに傾いていたかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和5年度は基礎データの入力を集中的に実施した。まず,①国勢調査の1920(大正9)年,1925(大正14)年,1930(昭和5)年,1935(昭和10)年,1940(昭和15)年次の報告書より,すべての府県別に府県内行政区分ごとの人口を男女別にエクセル表に入力した。ただし,この20年の間には市町村合併が行われた地方自治体があったので,個別町村ごとに合併・吸収による町村消滅がどこで生じたかを確認し,一覧表を作成した。②衛生局年報から府県別および府県内行政区分別の医療関係者数を入力した。具体的には,医師数,歯科医師数,薬剤師数,産婆数,看護人数で,看護人を除き,市部/町部/村部別のデータを入力した。なお,次の人口動態統計からのデータ系列との関係で,疾病(コレラ,赤痢,腸チフス,パラチフス,痘瘡,発疹チフス,猩紅熱,ジフテリア,流行性脳脊髄膜炎,ペスト)別に患者・死者数の府県別および市部のデータもとった。最後に,③日本帝国人口動態統計の道府県別と市部別表より,1920年から1940年まで毎年の乳児死亡(日齢・月齢別)・疾病統計(中分類:項目数は61から200へと増加)のデータ入力を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
推計作業に必要な基礎データの入力作業が終わったところで,すべての表につきゼロチェックを行ったところ,少なからぬ行と列において不突合が見つかった。入力ミスを訂正した上でもその数はほとんど減少しなかったので,いずれも原本における誤植・桁違い記載などに起因するものと考えられる。これらを訂正するには,たとえば,1,533を1,353とすることによって,あるいは1,223を123と修正することによって行と列のチェック結果がゼロとなるかどうかを試しつつ,一つ一つ行う必要がある。現在,この訂正作業が進行中であり,そのために,1928-38年の対象期間内において国勢調査年と国勢調査年間の年次における市部と郡部別人口推計にとりかかることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,まず上記の不突合問題を解決することから始める。次いで,国勢調査年と国勢調査年との間の年次における市部と郡部別の人口推計を行う。これは通常採用されることの多い等比法ないしは等差法による推計ではなく、住民登録人口系列のセンサス年間にみられた不均一な年次変化を反映させた推計とする。ただし,それを町村ごとに行うことはできないので,各府県内の市部と郡部別に国勢調査系列に準じた各年値を求めるものである。 この推計が完了したところで,次の2作業に取りかかる。まず,①対象期間における人口一人あたり医療従事者のタイプ別および府県別・市町村別の集計表から,人口一人あたりの統計によっても「無医村問題」の存在が確認できるか否か等を念頭に,種々の事実発見に努める。次に,②パネルデータを作成する。問題は府県をさらに分割する基準がデータ系列によって異なっているところにある。すなわち,(A)医療従事者は市郡別,(B)乳児死亡・疾病統計(感染症データ)は人口10万以上の市部とそれ以外の別,(C)県内総生産は産業部門別となっており,ずれがある。(A)と(B)の場合は人口あたりでの比較となるので,カバーする地理的範囲における多少の違いの影響はあまり大きくないであろうが,より大きな困難は(A)(B)と(C)との間の違いである。回帰分析にかけるには府県別総生産を市郡部別としなければならないので,その水系のために何か手がかりはないか,戦前期県内総生産推計を手がけた経験をもつ,本研究の協力者でもある攝津斉彦教授(武蔵大学経済学部)のアドバイスを得て推計を完成させる。この難問に解決の目途がついた段階で,同じく研究協力者である村越一哲教授(駿河台大学文化情報学部)と永島剛教授(専修大学経済学部)からのアドバイスを得ながら,乳児死亡および感染症データから得られる変数を被説明変数とする回帰分析に着手する。
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