研究課題/領域番号 |
23K01509
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石上 悦朗 神戸大学, 経済経営研究所, 部局研究員 (00151358)
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研究分担者 |
井上 修 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10618169)
佐藤 隆広 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (60320272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | インド鉄鋼企業 / 経営分析 / データベース / 日本鉄鋼企業 / インド / 鉄鋼業 / 財務分析 |
研究開始時の研究の概要 |
インド鉄鋼業は長い歴史を誇る。タタ鉄鋼会社、国営鉄鋼会社に加え、1990年代には新興の鉄鋼メーカーが台頭するとともに、誘導炉製鋼(電炉の一種)など独特の製法を持つ小規模事業者も族生して、インド独特の産業構造を作り出した。2010年代の後半には新興大手鉄鋼メーカーの経営破綻を契機に大規模な企業再編が進んだ。グローバル大手のアルセロール・ミッタルと日本製鉄も初めてインド進出を果たした。本研究は企業規模・所有主体・技術特性を異にする多様なインド鉄鋼業を個別企業レベルでデータベース化することにより経営の特性および産業発展との関連について分析を行なう。
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研究実績の概要 |
近年のインド鉄鋼業には大きな変化が生じた。その一つが日本の大手鉄鋼メーカーと欧州企業が連合して、インドの新興大手一貫メーカーであるEssar Steelを買収(共同支配企業を設立)したことである。本研究ではこの買収の事例を、日本および欧州における企業経営、とくに財務情報開示の程度に関して欧州企業と日本企業との相違(欧州>日本)に着目して特徴と問題点を明らかにした。これはインドを舞台にしたグローバルなM&A研究への本研究のユニークな貢献といえる。成果の一端を学会で発表した。言うまでも無く、財務情報は有価証券報告書を丹念に読むことによって得られる。今年度の検討を通じてインド、欧州および日本企業の財務情報項目と開示などについて、それらがもつ「くせ」を概略理解できたので、次年度以降の対象企業をより拡大した財務情報の収集と分析にとって有益な作業となった。 他方において、本研究のもう一つの柱である個別企業のマイクロデータをデータベース化する作業も着実に前進している。企業の財務情報には(被)雇用者に関する基本情報が不十分であることが多い。とくに社会属性などに関する情報は極めて希薄であり、これらについてマイクロデータは有益な情報源となり得る。なお、近年インドの上場企業に関しては有価証券報告書、あるいは別立てでSDGsの目標項目、とくに(被)雇用者と環境に即した企業の対応を記述することが義務づけられるようになった。ただし、情報の開示は企業ごとに大幅に異なっている。正規従業員・労働者と非正規労働者、給与・賃金などについてラフな情報が得られるので補助的情報として活用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.インド政府鉄鋼省傘下の調査機関(Joint Plant Committee)作成の鉄鋼企業リスト「The Indian Iron & Steel Database 2022-23」を購入した。本年度は中小の鉄鋼製造企業である誘導炉(887事業所、生産能力合計5740万トン/年)とリローラー(単圧メーカー、1076事業所、同9340万トン)の生産能力について、とくに誘導炉-リローリングを統合した事業所(連続鋳造)の増加と規模拡大を確認した。また、鉄鋼上場企業約10社について、SDGs対応の一環として正規・非正規の雇用者・労働者数の正確な人数と、給与水準を示す資料(給与・賃金の中央値表記)を拾い出した。 2. インドの全国標本調査(NSS)の雇用失業調査(Employment and Unemployment Survey: EUS)の1983年、1987年、1993年、1999年、2004年、2009年、2011年の個票データと定期労働力調査(Periodic Labour Force Survey: PLFS)の2017年と2022年の個票データを利用して、インド鉄鋼産業に従事している就業者の数や賃金、さらその社会的属性に関する集計を行った。 3. Accord Fintech Pvt.社より,インド企業の財務データを収録したデータベース「ACE Equity Nxt.Com」をサブスクリプション形式で購入した。インド鉄鋼企業について,主要な財務データを集計し,分析可能な形式に調整加工して,テスト的な分析を行って問題がないことを確認した。 4.経営破綻したEssar SteelをArcelorMittalと日本製鉄が共同買収した事例について、買収に至る詳細な経緯と財務情報の開示における問題点について検討を行なった。さらに、アジア経営学会においてこの研究報告を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
1.インド鉄鋼企業は、近年、銑鋼一貫の大手鉄鋼メーカーが支配的地位を占める傾向にあるとはいえ、所有主体(国営、民営)、生産方式と規模、原料ヘのアクセス、採用している技術、製品構成および労働者の技能と待遇などにおいて多様性が顕著である。多様性の産業構造論的含意と今後の展望について立ち入った検討をおこなう予定である。また、インド鉄鋼業の今後の展望に関連して、カーボンニュートラルに向けた政府と鉄鋼企業の対応を検討したい。 2.個票データの質問項目について調査年で異動があるため、まだ時系列データとして全ての集計値が比較できないが、本年度は、時系列データとして比較可能なものにすることを予定している。また、本年度は、インドの年次工業調査(ASI)の個票データを利用して、インド鉄鋼産業のフォーマル部門の生産や雇用に関する時系列データの作成を試みる予定である。 3.インド鉄鋼業と日本の鉄鋼業について,会計的に比較分析した研究という視点から、より詳細な内訳科目についても集計して,収益性,効率性,安全性,生産性の観点からファンダメンタル分析を実施し,日本の鉄鋼業との構造的な相違を会計的な側面から明らかにする。また,可能な限りデータベースに収録されているインド企業の全てについて同様に集計することによって,インド国内における業界産業別の包括的な比較分析を行うことによって,インド国内における鉄鋼業の特異性について明らかにしていきたい。
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