研究課題/領域番号 |
23K01510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70507201)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 商標 / 不使用商標 / 商標の枯渇 / 商標の混雑 / 商標の乱立 |
研究開始時の研究の概要 |
商標の出願・登録が年々増加し、商標選択の幅が狭まる中で、消費者に受け入れられる組み合わせの商標が取得しにくくなっているという。こうした視点は、「商標資源の枯渇」と呼ばれ、注目を集めている。 本研究では、「枯渇」につながるロジックとして、「不使用商標の乱立」や、一部商標への人気の集中による「混雑現象」に焦点を当て、以下の分析を行う。①不使用商標の実態を商標の保護範囲の単位である「類似群コード」レベルで把握する。②日本語コーパスで出現頻度の高い内容語について、商標登録の有無および頻度(複数の区分や類似群コードでの登録)を調査する。これらの分析から、我が国商標の枯渇の深刻度を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、不使用商標の実態を把握するとともに、不使用取消審判の利用状況と制度変更の影響を分析した。 『知的財産活動調査』(特許庁)によれば、我が国の主要出願人における平均商標利用率は2020年で85%程度である。また、回答企業の保有商標合計に占める使用件数の割合は75%程度であり、所有商標の整理が進んだことにより、この値は上昇傾向にある。また、1994年から2019年の不使用取消審判に関する集計・分析から以下の点が明らかになった。第一に、不使用取消審判の請求件数を同年の登録商標の総件数と比較すると、審判の対象になる商標の割合は、分析期間中で最も請求件数が多い2007年で約0.1%、直近の2019年で約0.05%である。つまり、審判を請求して取り消さなければならない不使用商標の存在は必ずしも多くない。また、審判の件数や比率の推移を見る限り、不使用商標の問題が深刻化しているとも結論付けられない。第二に、分析期間を通じて審判成立率は、70%から80%程度である。審判の対象になった商標の大部分が実際に登録取消になっていることは、不使用商標の排除において、審判が実効性を持つことを示唆している。この他、平成8年(1996年)の商標法改正の影響として、更新出願制度の廃止(更新時の使用確認の廃止)が不使用商標の増加をもたらしたと示唆された。 分析の範囲では、我が国で商標制度が機能障害に陥るほどの深刻な問題は確認できなかったが、我が国の商標資源が経時的に枯渇していく可能性は否定できない。本年度は、不使用商標の問題、商標枯渇の問題に関する一次的接近として、商標の利用状況および不使用取消審判の実態調査に注力した。今後は、不使用商標が商標選択のコストを上昇させるのか、日本の商標は枯渇しているのかといった疑問に対して、より直接的な証拠が示されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不使用商標の問題、商標枯渇の問題に関して論点を整理した。また、当該問題への一次的接近として、商標の利用状況および不使用取消審判の実態調査を行った。これらの成果は書籍の一部として出版された(*)。また、進行中のプロジェクトについては、「不使用商標の実態を類似群コードレベルで把握する研究」においては若干の作業遅れがあるが、「日本語の上位頻出語に関する商標登録の有無に関する研究」では予定を前倒しで準備を開始できた。以上の点を踏まえ、「おおむね順調である」と判断した。
* 中村健太(2023)「商標の利用と不使用取消審判:商標枯渇問題への接近」, 根岸哲・泉水文雄・和久井理子(編)『プラットフォームとイノベーションをめぐる新たな競争政策の構築』, 商事法務.
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今後の研究の推進方策 |
①不使用商標の実態を類似群コードレベルで把握: 本分析は、類似群コードレベルで商標の使用・不使用を調査するものである。手順は以下の通りである。(ⅰ)分析対象として、産業別に商標出願を活発に行っている企業(10社程度)を選定する。サービスに関する商標も含めたいので、非製造業も対象とする。(ⅱ)次に、これら企業が出願した商標を特定し、一定数をランダムに抽出する。これが、調査対象の商標である。(ⅲ)(ⅱ)の商標を特許庁の『特許情報標準データ』と接続し、商標に関する書誌情報を取得する。特に重要な情報は、商標の呼称および保護範囲を表す指定商品・役務の類似群コードである。(ⅳ)前で取得した商標の情報を用いてWEB検索を行い、当該商標が、保護範囲において使用されているかどうかを判定する。多くの場合、一つの商標は複数の類似群コードを指定しているので、調査結果は、保護範囲に対して「完全に使用している」「一部しか使用していない(一部不使用)」「完全に使用していない(完全不使用)」の何れかになる。一部不使用、完全不使用の場合、商標権者は、無用に広い権利を取得している可能性があると示唆される。以上の分析を通じ、不使用商標が多く見られる産業、商標分野、経時的変化等を特定し、不使用商標が発生するメカニズムを導出する。
②日本語コーパスの上位頻出語に関する商標登録の有無および頻度: 本分析では、国立国語研究所の日本語コーパスで出現頻度の高い内容語の上位1000語、3,000語、5,000語について、『特許情報標準データ』を用いて商標登録の有無および頻度(複数の区分や類似群コードでの登録)を調査する。この作業から、頻出単語における商標の混雑度を明らかにする。また、米国の研究事例と比較することで、日本商標の特徴を探る。
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