研究課題/領域番号 |
23K01524
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
高山 直 北陸大学, 経済経営学部, 助教 (40965216)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | サテライトオフィス / 生産性 / 豊かさ / 地域資源 / 無形資産 / Well-being / 批判的経営研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、地方におけるサテライトオフィス集積地のフィールドワークを通じて、従来の経営学が想定してきた生産性概念と豊かさを問い直し、これからのわれわれの働き方・生き方に向けて、生産性概念と豊かさを再構成していく論点を導き出す。地方におけるサテライトオフィス集積地に根ざした生産性に対する独特な考え方や、地方独自の豊かさを検討するために、サテライトオフィス集積地のフィールドワークを行う。さらに、経営学が想定してきた生産性概念と豊かさに関する系統的なレビューに基づいて、地方の仕事の進め方や豊かさを検討し、そこから得られた知見から再度学説史を振り返ることで生産性概念と豊かさを問い直す論点を導き出す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、地方におけるサテライトオフィス集積地のフィールドワークを通じて、従来の経営学が想定してきた生産性概念と豊かさを問い直し、これからのわれわれの働き方・生き方に向けて、生産性概念と豊かさを再構成していく論点を導き出すことにある。本研究は、経営学における生産性概念と豊かさを、サテライトオフィス集積地におけるフィールドワークを通じて再構成していくための論点を導くために、研究期間内に以下のテーマに取り組んでいく予定であった。 a)経営学における生産性概念および豊かさをめぐる学説史的検討、b)生産性概念や豊かさを批判的に考察する議論との比較検討、c)サテライトオフィス集積地におけるフィールドワーク、d)経営学における生産性概念と豊かさを再構成していくための論点の導出 2023年度の実績としては、aおよびbに着手したところである。具体的には、第一に、髙山ほか(2023)において、デジタル化を通じて無形資産としての地域資源を可視化させる企業実践に着目したものである。近年、地方におけるサテライトオフィスの乱立は、単に都会的で生産的な働き方を地方において実現させるものではなく、都会的な働き方を地方に導入・定着させる過程で、本来は見失われてきた地域固有の価値(その土地に根ざす無形の文化遺産や住民同士の相互扶助など)が再生されるという側面にも注目しなければならないものである。本研究では、マーケティングや管理会計の分野で検討される無形資産をいかに価値評価するのかということに関連するレビューに基づいて、地方におけるサテライトオフィス集積地の意義を考察したものであった。 第二に、髙山(2023)では、経営学における生産性概念を再構成していくことに向けて、生産的に働くことと国富との関係を論じたアダム・スミスから現代の経営学を関連づけることで、生産性概念の意味内容の変容を各時代ごとに検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、経営学における生産力至上主義的な生産性概念を批判的に問い直すための学説史的検討を行ってきた。また、経験的研究の際に拠り所となる、地域固有の資源や無形資産への理論的な位置付けを検討するために、筆者の研究領域の経営組織論や経営管理論を超えて、マーケティングや管理会計の研究者との協力を得ることで、サテライトオフィスを導入する過程で、無形資産をいかに価値評価し重要性を付与していくことができるのか検討してきた。しかし、生産性概念や豊かさをめぐる学説史的な検討はいまだ十分とはいえず引き続き検討を要するものであり、経営学における生産性概念を相対化させる隣接の研究領域(社会学・人文地理学など)との接続には未だ至っていない。そのため、研究進捗としてはや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、第一に、経営学における生産性概念や豊かさに関する学説史的検討を行いながら、隣接の学問領域の知見を取り入れることで、生産力至上主義的な生産性概念を批判的に見直していく。具体的には、人文地理学における知見を参照する。空間論的転回(spatial turn)が、近代化に伴うリニアな発展プロセスを時間性批判に基づいて行ったように、経営学における生産力至上主義的な生産性概念は、リニアな時間性を暗に前提していると考えられる。上記の論点は、学術紙へ投稿予定である。 第二に、地方におけるサテライトオフィス集積地へのフィールドワークである。筆者はすでに、徳島県神山町にて先行調査を実施しており、サテライトオフィス利用者が集う場所やそれらを管理運営するNPO法人グリーンパレーそして市役所などでヒヤリングを行ってきた。とはいえこの土地での成功は一種の神話として語られることが多く、他の地方と比較することができないと指摘されることがある。そのため実際に他地域との比較を行うことが欠かせず、さらなるヒヤリング調査を行う予定である。
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