研究課題/領域番号 |
23K01543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松浦 民恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
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研究分担者 |
坂爪 洋美 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10329021)
佐藤 博樹 東京大学, 社会科学研究所, 名誉教授 (60162468)
武石 惠美子 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70361631)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 集団的労使コミュニケーション / ダイバーシティ / ERG / 労働組合 / 職場集団 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本企業において形成の萌芽が見られている、労働組合以外の多様な「職場集団」が、集団的労使コミュニケーションにおいてどのような機能を担っている(担おうとしている)のかについて、伝統的の職場集団である労働組合との比較を通じて分析する。 集団的労使コミュニケーションにおける職場集団の機能を、労働組合のみならず多様な職場集団にまで拡張して明らかにする点に本研究の独自性がある。本研究が明らかにする点は、社員が多様化する職場で、経営側がそれぞれの職場集団とどう向き合うべきか、労働組合がどのように変革していくべきか、を考える上での示唆にもなる。
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研究実績の概要 |
本研究は、労働組合及びERG(Employee Resource Group)のそれぞれに関する労使コミュニケーションの現状や課題を明らかにし、ダイバーシティのもとでの労使コミュニケーションのあり方について検討することを目的としている。 2023年度は、「集団の対象」と「集団的発言の方法」のいずれかに新規性があると認められる職場集団を対象として実施したインタビュー調査の結果をとりまとめた。職場集団は、具体的には労働組合2団体、ERG1団体、さらにはナショナルセンターがフリーランスの課題解決に向けて立ち上げたサイトである。インタビュー調査結果からは、集団的発言機能は「集団化機能」「発言・吸い上げ機能」「調整・提案機能」から構成され、これらの機能を「補強」しようとする動きと、「多元化」しようとする動きの双方が抽出された。 また、中央大学大学院戦略経営研究科ワークライフバランス&多様性推進・研究プロジェクトが実施した国際比較調査によって、イギリス・フランス・ドイツ・アメリカにおける、社員による労働組合やERGの認知や参加の現状を確認した。さらに、上記の結果も踏まえて、文献調査によって各国における労働組合の制度枠組みと最近の動向をリサーチした。結果として①ドイツは産別労組が依然として影響力を有していること、②フランスは産別労組の影響力が相対的に薄れていること、③アメリカの産別労組の地方支部は、日本の企業別労組と実態としては類似しているが、日本に比べて敵対的な交渉がなされるケースが多いこと、などが明らかになった。 これらのインタビュー調査やアンケート調査、さらには文献リサーチの結果を踏まえ、本研究の調査の方向性について改めて議論し、今後はERGにより焦点を当てて分析を深めていくことも含めて検討することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中央大学大学院戦略経営研究科ワークライフバランス&多様性推進・研究プロジェクトによる国際比較調査(本研究のメンバー全員が参加)において、社員による労働組合やERGの認知や参加の現状に関する結果を確認し、各国の労働組合の最新動向も踏まえたうえで、本研究の調査のフレームワークを再度検討することが有益だと考え、国際比較調査の実施・分析を先行した。それに伴い、本研究におけるアンケート調査の実施予定を2024年度から2025年度に1年後ろ倒しにした。 2024年度は、調査のフレームワークを再検討したうえで、国内のERGなどのインタビュー調査を追加的に実施し、アンケート調査の下準備を行う予定である。 結果として、本研究の進捗はやや遅れているが、国際比較調査やそれを踏まえた文献リサーチの結果を踏まえたうえで、本研究の調査のフレームワークを再検討したことは、本研究をより実効的なものとするために優先すべき事項であり、そのためにアンケート調査の実施時期を1年ずらしたことは必要な対応だったと考えている。 なお、調査のフレームワークの再検討においては、アンケート調査や文献リサーチで明らかになった欧米各国における労働組合の多様性、さらには国内のインタビュー調査で抽出された労働組合とERGの異質性が議論となり、今後のインタビュー調査やアンケート調査においては、労働組合とERGの双方を同じステージで比較するのではなく、むしろERGにより焦点を当てて深堀りしていくことも含めて、さらに議論を深めることとなった。また、ERGに対するインタビュー調査やアンケート調査のなかで、労働組合との役割分担や労働組合に対する期待などを明らかにすることも意義があるという指摘もなされ、引き続き検討していくこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、ERGに対するインタビュー調査を追加的に実施する。なお、日本においてはERGに対する認知度が低く、ERGとは呼称されていないもののERGに極めて類似した活動を展開している職場集団も存在することから、こういった職場集団も必要に応じて研究の対象に含めることも検討する。 インタビュー調査では、ERGと労働組合との関係性・役割分担や、ERGから見た労働組合に対する期待も含めて聞き取りを行う。ERGへのインタビュー調査で、労働組合との関係性などが十分に把握できない場合は、必要に応じて労働組合に対するインタビュー調査の実施も検討する。 インタビュー調査の結果を踏まえて、アンケート調査の対象や実施方法について議論して具体化する。設問内容や選択肢など、調査票の設計についても準備を進める。現時点では、①ERG活動の現状や課題、②ERGなどが集団的発言を職場の課題解決につなげていくためにはどのような取り組み(集団のモチベーションやマネジメント、経営との関係性などを含む)が有効なのか、③目的達成のために労働組合との連携や役割分担が可能なのか、といった内容を明らかにするための設問を想定している。 また、並行して、インタビュー調査の協力先を中心に、アンケート調査実施への協力を打診・交渉する。アンケート調査への協力先が順調に確定できれば、2025年度に、ERGなどを対象とする、インターネットによるアンケート調査を実施する。アンケートは、ERGなどの組織メンバーを対象として実施することを想定している。ERGなどの活動の活発さ、労働組合との関係性などの観点からアンケート調査を分析し、効果的な集団的発言に向けた示唆を得る。
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