研究課題/領域番号 |
23K01551
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
朴 泰勲 関西大学, 商学部, 教授 (50340584)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | クラウド / 両利き戦略 / 中国の自動車産業 / オープンスタック / モジュラー化 / プラットフォーム / モジュールの多重化 / システム統合 / アーキテクチュラル知識 / 電気自動車 / 両利きの戦略 / 企業内研究者 / 日中韓独の自動車メーカー |
研究開始時の研究の概要 |
先行研究は自動車産業ではガソリンと電気自動車の市場が併存しているため、深掘的知識と探索的知識の均衡をとる必要があると指摘してきた。しかし、先行研究では企業が探索的知識と深掘的知識を組織内で吸収・消化することにより、車の製品アーキテクチャの急激な変化に対する技術的対応能力を高める必要があることについてはあまり言及されてこなかった。本研究は高性能の車載電池と電動部品を開発するため、探索的知識と深掘的知識を学術的知識と組み合わせ、知識間の相互補完性を高めるアーキテクチュラル知識のモードとそれが実現可能な開発組織を明らかにすることを目標とする。
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研究実績の概要 |
中国では政府の環境規制と国内産業の振興政策により電気自動車の普及が進んでいる。電気自動車にはAI、IoT、自動運転技術がかかせないものとなっている。電動化とともに、自動車もインターネットにつながる時代になり、AIや自動運転技術にはクラウドサーバによるサービスの重要性が増している。しかし、近年米中の地政学的なリスクの側面から、中国企業はクラウド関連サービスを世界三大クラウドサービス会社(マイクロソフト、アマゾン、グーグル)のパブリッククラウドを利用せず、独自に開発する傾向がある。たとえば、中国企業であるアリババや華為などのような企業は独自のクラウドサービスを自動車メーカーに提供している。AI、IoT、自動運転を車に搭載するため、中国企業が注目しているのは、OpenstackとKubernetesというオープンソースのプラットフォームである。最初はアメリカのNASAが重要な情報をパブリッククラウドに保存することを回避するため、開発したプラットフォームであったが、2010年にオープンソースとして公開するようになった。このように近年電気自動車の車載電池、電動部品、自動運転をめぐって競争が激しさを増していくなかで、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)として電気自動車のソフトウェアの製品アーキテクチャは徐々にモジュラー化が進んでいる。モジュラー型クラウドシステムの製品アーキテクチャはオープンソースのプラットフォーム(OpenstackやKubernetes)とクローズドプラットフォーム(アマゾンAWSなど)があるが、電気自動車メーカーはこれらのプラットフォームを必要に応じて組み合わせて活用するケースが増えている。また、オープンモジュラー型の場合、故障に備えて製品やソフトの開発に余分なレプリカやスラック部品の組み込みの重要性が浮き彫りになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
車載電池と関連し、電気自動車メーカーは 充電施設や電池の消耗状況に関するデータを蓄積するため、クラウドサーバを使用するケースが多く、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて活用するケースが多い。また、電動部品の制御や自動運転においてもクラウドを使用し、電気自動車の制御データとして管理されることが多い。このように車載電池、電動部品、自動運転システムと関連するクラウド制御システムの製品アーキテクチャは近年アプリのコンテナ化(dockerやkubernetes)によりモジュラー型アーキテクチャ化が促進されている。現在、Openstack,Kubernetes, Docker, Proxmoxなどをベースにしたサーバシステムを運用しながら、クラウドシステムが自動車産業のサプライシステムに及ぼす影響について研究している。電気自動車メーカーや部品メーカーのインタビュー調査はまだ3社しか行っておらず、計画より遅れている。電動部品や電池の開発と連携し、どのようにクラウドサービスのデータを分析し、電気自動車の性能向上につなげていくのかは重要な経営課題ではあるが、現在開発中の製品やソフトに関する情報やデータはまた公開されているものが少ない。今年度は韓国の電気自動車関連の電動部品を製造開発する企業を訪れ、クラウド化による製品アーキテクチャの知識がどのように変わったかについてインタビュー調査をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
電気自動車を開発する自動車メーカーは電気自動車の充電施設や電池の消耗状況に関するデータを蓄積する必要があるため、クラウドを活用するケースが増えている。また、電動部品や自動運転においてもクラウドが使用され、電気自動車の制御データの蓄積も進んでいる。加えて、車載電池、電動部品、自動運転と関連するクラウド制御システムの製品アーキテクチャのモジュラー化が図られている。先行研究によれば、モジュラー型製品アーキテクチャはオープン型とクロズド型に分けら、企業は自社の製品を産業のドミナントデザインにするため、経営戦略に合わせてオープンもしくはクロズドモジュラー型のいずれかを選択すると論じられてきた。 しかし、フォルクスワーゲンやテスラはソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)を開発する際に、戦略的に重要な部品やサービスなどについてはクロズドモジュラー型を、比較的汎用技術のデータはオープンモジュラー型を選択し、オープンとクロズドクラウドを組み合わせて活用している。また、モジュラー型クラウドシステムの場合、アプリの不具合に備えたレプリカの増設や多数のバーチャルサーバ間の調律機能が必要とされ、完成車メーカーと部品メーカーの間でクラウドシステムによる情報の共有と組織間協業が必要となっている。しかし、クラウドをベースにした自動車メーカーと部品メーカーの協業による製品開発には、コア技術とノウハウの保護が難しくなるため、いかに特許による技術の専有化を進めていくかが重要となる。今後、自動車産業におけるクラウドの活用と特許の相互関係について調査するため、日韓中の特許データの収集を進めると同時に、部品メーカーのインタビュー調査も積み重ねていく計画である。
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