研究課題/領域番号 |
23K01558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内田 恭彦 山口大学, 経済学部, 教授 (40379508)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 地域資源ブランド / 農産加工品 / 高付加価値化 / 地域資産化 / ブランド / 中山間地域 / 多様な価値(まなざし) / 乖離性 |
研究開始時の研究の概要 |
中山間地域の生産品やサービスの付加価値を、地域の人々が誇りを持って上げていけるために「地域資産」を構築し(地域資産化)、事業活動を行っている。本研究では山口県長門市向津具半島地域の「むかつ国で遊ぼう協議会」、山口県山口市徳佐地域の「徳佐りんご組合」、京都府南丹市美山町の「芦生わさび生産組合」とその顧客を対象に、ホームページやSNS情報等のやり取りを含めた地域の人々同士や他地域の顧客などとのやりとりや活動を調べ、地域資産化の成功要因、プロセス、そしてその機能(効果)を明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究実績:内田恭彦(2024)「地域資源ブランドによる中山間地域の農産加工品の高付加価値化」『「大学の森」が見た森と里の再生学-京都芦生美山での挑戦』京都大学出版会,第5章所収(分担執筆) 本研究の目的は中山間地域の創生に向けて、各地域に存在するもの等を「地域資源化」し社会的・経済的により豊かにするための理論を実証的に構築することである。今回の研究成果は、単にそれまで地域に存在していたもの等が地域ブランド化され経済的な価値を有する地域資源となる、即ち顧客がそれに特別な意味を認識する過程を明らかにするものである。 具体的には京都府南丹市美山町原生林に近い状態で存在している森があり、地元で芦生原生林と呼ばれている。そこで「京・美山 芦生原生林」という地域ブランドを作り、これを冠した農産加工品の販売を始めたので、本研究がスタートする以前に購買者にアンケート調査を行っていたのだが、これを活用して上記の過程の分析を行ったものである。そして本研究の地域資源化に向けての過程と機能の一部を明らかにした。 本研究の意義であるが、今回の研究成果は地域資源ブランドおよびその言葉が、顧客側の価値観などに基づき顧客により意味づけされ効果を発揮するということ、および環境問題や少子高齢化などの社会問題に関心のある人は、従来の「旅行先のお土産」というものではなく、原生林を守り理想的で持続性のある中山間地域集落の発展の重要性を認識して購入していることを明らかにしたことである。これは地域資源ブランドの内容などが顧客に伝わるのではなく、顧客の主体性の重要性を強調するものであり、ブランド理論に新たな視座を提供するものである。また中山間地域の資源化の在り方によっては、従来の観光地のお土産とは異なる、別の市場(顧客対象)の可能性を明らかにしたことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では3つのフィールドにおいて実証研究を行う計画である。第1は観光リンゴ園事業者が16集まってりんご狩りの観光地を形成し、経済的にも成功している山口県山口市徳佐地域である。第2は山口県長門市の向津具半島地域で、ここでは地元の事業者が日本固有のプラムで、同地域に歴史的に関係のあるイクリや温州ミカンの先祖にあたる九年母(くねんぼ)やその他の地元の自然に生えている果実(木苺など)を地域資産とし、それで地域おこしを企画している。第3は京都府南丹市美山町芦生地区である。ここでは「芦生原生林」と呼ばれている森林があるので、それを地域資産ブランドにして同集落の農産加工品の高付加価値販売に取り組んでいるところである。 この一年間で第1の山口市徳佐地区については、データ収集はすでに終わっており、中山間地域の果樹園農業者が集まり、観光農園を行うことで収益を得られる構造に関する分析が進んでいる。2024年度には論文にまとめる予定である。また第3の京都のフィールドにおいては、ネットによる情報発信とそれに対する顧客の反応から中山間地域の事業者がネットを用いてブランド構築をしていくプロセスを追う。2023年度はHPおよびSNSを立ち上げることができた。コンサルタントのアドバイスを得ながら、内容の充実とネットからのデータ収集の方法を検討した。第2の山口県長門市であるが、2023年度には同地域およびそこで中心的な活動を行っている事業者の情報収集などを行い、計画の推進と研究についての打ち合わせを行った。しかしイクリなど果樹園を構想する事業者が、計画を変更したため、現在新しい事業で本研究が進められるか検討しているところである。 なお研究テーマとの関係では2つのフィールドのみでも問題ないので、研究は順調に進んでいると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策であるが、まず山口市徳佐地区の16事業者による観光リンゴ園事業体についてである。ここでは成功した構造的要因は明らかにできたが、成功したことによりこの構造に変化があることも分かってきた。この構造の変化がどうしてなのか、そのことは今後の同地域にどのような変化をもたらすのか、などについて研究していく。これまでは一人のリーダーが最初に観光リンゴ農園を成功させ、それに周囲がついてきたのだが、成功した要因は16事業者全体で観光リンゴ園事業を行ったからではあるものの、細かく見ると個々の農園の集客方法や収益の上げ方は異なっていた。このことと構造変化との関係を追いたい。追加インタビュー調査を検討しているところである。また京都府南丹市美山町芦生地区においては、今後HPやSNSを整備し、多様な情報の発信を行い、①どのような情報に顧客は反応するのか、②どのような情報を提供した後に売上(ふるさと納税など)が伸びるのか、などのデータをとり、分析していくこととしたい。 また山口県山口市徳佐および京都府美山町芦生地区のケースについては、歴史的なデータもかなり取れた。それぞれがどういう過程を経て、地域資産化を進めて高付加価値の事業を行えるようになっていったのかについても、研究していくことにしている。 なお山口県長門市のフィールドにおいては、事業者と話しをし、彼らの新たな事業計画などが研究を行えるものなのか、また研究にご協力頂けるのかなどを確認し、その上で研究をこのフィールドで進めるか、また進めるとしたらどのような方策かを検討することとしたい。
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